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ライムブックスという素晴らしい翻訳レーベルが(ほぼ)休刊になったから、いち読者の思い出話をさせてくれ

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翻訳ロマンス好きなら、ライムブックスを知らない方はいないでしょう。

ご存知、原書房から出ている翻訳ロマンス小説のレーベルです。

「良質のロマンスを、あなたに」「毎月10日に、ときめきをお届け」がキャッチコピー。

この女性が描かれたチラシ、本に挟まりまくってますよね?

先日、そんなライムブックスが「いったん刊行をお休み」するという情報がXに投稿されました。自分でも確認したところ、本当でした。翻訳ロマンスファンにとっては衝撃です。

ライムブックスのチラシ…。悲しい…。

なのでこのブログは、ライムブックスという素晴らしい、大好きなレーベルが「いったん刊行をお休み」することを悲しんだ1人のロマンス好きのただの思い出話です……。

目次

出会いはリサ・クレイパス

「悲しいほど ときめいて」に悲しいほどときめいた

わたしと海外ロマンスの出会いは、こちらに少し書いてますので省略します。簡単にいうと「時の旅人クレア」が当時中学生だったわたしをロマンス沼に叩き落としました。

それから少し経った2005年、「悲しいほど ときめいて」というロマンス小説と出会いました。

作者は、本書が初邦訳作品となったリサ・クレイパス

もう、面白すぎてイチコロでした。

まだ10代だった当時、海外ロマンスのヒーローはわたしにとって“かなり大人”でした。日本の少女マンガと違い、30代のヒーローが多数。中には40代以上のヒーローもいます。

「悲しいほど ときめいて」のヒーロー・ニックは初登場時24歳。本編開始時に27歳という若さでした(今考えるとニックもアラサーですが当時「20代だ!」と思った思い出)。

ニックはボウ・ストリートの捕り手。そのあとの海外ロマンスで何度も何度も見ることになる“ボウ・ストリート”という言葉に初めて出会ったのも「悲しいほど ときめいて」だと思います。

ちなみにボウ・ストリート・ランナーズ(ボウ・ストリートの捕り手)は現在の警察の前身のようなもの。コヴェント・ガーデンとか、スコットランド・ヤードとか、サヴィル・ロウとか、メイフェア通りとか、イギリスに行ったことがないのに海外ロマンスを読んで知った知識がたくさんある……(たぶん海外ロマンス好きあるある)。

話が逸れましたが、「悲しいほど ときめいて」が当時の自分に刺さりまくり、より海外ロマンス沼に沈み込みました。

「悲しいほど ときめいて」で一番心に残ってるのは、実は訳者の古川奈々子さんのあとがきです。

以下、引用します。

実はクレイパスも1998年にテキサスで大洪水を経験し、家が文字通り屋根まで水につかって、着の身着のままで逃げ出したそうです。数日後、彼女は母親とスーパーに買い物に出かけました。母娘はごった返す店内で本当に必要なものだけをカゴに入れてレジに並んでいました。ふと互いのカゴの中を見ると、なんとどちらのカゴにもロマンス小説が一冊入っているではありませんか! そのときクレイパスはあらためて決意したそうです。「こんなに苦しいときだからこそ、人々はひとときでも現実を忘れられる楽しみを欲するのだ。もっともっとすてきなロマンスを書こう。人々に幸せを与えられるロマンスを!」クレイパスの小説が読者をひきつけてやまない理由がよくわかりますね。

「悲しいほど ときめいて」訳者あとがきより。

天災が起こったり、コロナでエンタメが“不要不急”と言われたりするたびに、わたしはこの言葉を思い出していました。

わたしにとって、現実が苦しいときに助けてくれたのは海外ロマンス小説や少女・女性向けマンガ&小説などの恋物語だったからです。

余談ですが、日本だと例年、リサ・クレイパスの新刊が12月に刊行されていました(もちろんライムブックスから!)。が、今年は出ませんでした。そして近年彼女が筆を絶っているという投稿があり、それについて書かれた記事を読みました。

翻訳サービスを使って上記の記事を読んだだけなので、この件について何かを言うことは控えます。ただ、学生の頃からリサ・クレイパスのロマンスにすっごく励まされて萌えて、新作も待ってるよ!という気持ちだけ書いておきます。

リサ・クレイパスを語りだすと止まらない

ということでわたしにとってライムブックスは、「リサ・クレイパスの本を出してくれるレーベル」という刷り込みがあります。

ヒストリカルのオールタイムベストとも言える「あなたを夢みて」でデレクに恋し、「冬空に舞う堕天使と」でセバスチャンに悶え(性癖がバレる……)、ハサウェイ家シリーズレイヴネル家シリーズも揃え……。「あなたを夢みて」と「冬空に舞う堕天使と」は何度も何度も何度も何度も読み返すほどの愛読書です。もし読んでない方がいたらぜひ……!

「冬空に舞う堕天使と」で思い出しましたが、グレトナ・グリーン(駆け落ち結婚のメッカ)を知ったのも海外ロマンスだ……。ヒロインのエヴィーは吃音で悩んでいるのですが、意外なことに悪名高い放蕩貴族セバスチャンにはあまり吃音が出ないんです(運命……!)。2人がある事情からグレトナ・グリーンで駆け落ち婚をしようとして、ひたすら馬車でスコットランドを目指すのですが、恐ろしい寒さの道中、傲慢なセバスチャンがエヴィーを甲斐甲斐しくお世話するんですよね。放蕩者が“壁の花”(壁の花という言葉を知ったのも海外ロマンス……)のヒロインの世話をするってめちゃくちゃ意外性があって萌えました。デレクとセバスチャンの話、永遠にできるな……。

ほかにも「ふいにあなたが舞い降りて」は、30歳(19世紀ロンドンだと行き遅れ)でぽっちゃりの女流作家アマンダが自分に男娼をプレゼントするって導入なんですが、ロマンスとしても女性の自立物語としても本当に素晴らしくて。最近だと「カサンドラを探して」、面白かったですよね。

ライムブックスの休刊のお知らせに、「リサ・クレイパスの新作が出版された際は刊行いたします」と書かれていることからも、本当に人気作家だとわかります。

スーザン・E・フィリップス、コニー・ブロックウェイ、そしてエリザベス・ホイト

「フットボールクイズ」に号泣

リサ・クレイパスだけで何文字書いてんだってなったので、話を進めます。

ライムブックスは当然リサ・クレイパスだけではありません。

2000年代に刊行されたものだと、わたしはスーザン・エリザベス・フィリップスコニー・ブロックウェイが大好きでした。

「キスミーエンジェル」「あなたがいたから」なども面白かったですが、スーザン・E・フィリップスはやっぱり「ロマンティック・ヘヴン」が最高!

超有名な元一流フットボール選手のボビー・トム・デントンと、一見冴えないグレイシー・スノーの恋に、何度笑い、泣き、悶えたことでしょう。モッテモテのボビー・トムは自分と結婚したい女(山ほどいる)に「フットボールクイズ」というフットボールに関する超超超超難問クイズを仕掛けるんです。それに答えられないと、“ボビー・トム・デントン夫人”にはなれない。いままで全問正解した女性はいませんでした。でも最後にグレイシーに「フットボールクイズ」を出したときは……いやネタバレなんで言えないんですけど、思い出すだけで涙が出てくる。

アメリカってフットボールが本当に大人気なんだな〜とか、“トロフィーワイフ”って言葉とかを知ったのも海外ロマンスを読んでたからこそ。

コニー・ブロックウェイは「薔薇の狩人3部作(ローズ・ハンター・トリロジー)」が大好き。「愛が薔薇色に輝けば」のラムゼー・マンローのヘレナへの愛に胸打たれました。

みんな大好き「メイデン通り」シリーズ!

ライムブックスでお馴染みのメアリ・バログを初めて読んだのは、ヴィレッジブックスから刊行された「ただ忘れられなくて」だと思います。「なんて優しい作風なんだ……!」と感動して、それからメアリ・バログを追うようになりました。ライムブックスのハクスタブルケ家シリーズも楽しく読んだ記憶があります。

ヴィレッジブックスも、2022年の12月に出版事業を終了したんですよね……(涙)

それから、ライムブックスを語るときに絶対外せないのがエリザベス・ホイトです。

みんな大好き「メイデン通り」シリーズ

謎に包まれた「セントジャイルズの亡霊」という存在をキーに、さまざまなカップルが登場します。わたしのお気に入りは、「愛しき光を見つめて」「愛の吐息は夜風にとけて」です。

海外ロマンスはかなりシリーズものが多くて、わたしは基本的には「どれから読んでも面白いよ!」派なのですが(布教のため、できるだけ最初のハードルを下げる作戦)、「メイデン通り」シリーズは1作目の「聖女は罪深き夜に」から読んでほしい。もしかしたら最初は「う〜ん?」ってなるかもしれないんですが、わたしは4作目の「愛の吐息は夜風にとけて」あたりからはもう夢中でした。全体的にけっこう破天荒な設定なんですが、10作目の「心なき王が愛を知るとき」とかね、ヒーローが裸族ですごくよかった(笑)

「メイデン通り」シリーズ以外だと、「雨上がりの恋人」が好き! 伯爵の長女と土地差配人のラブストーリー……つまり女性のほうが身分が高い身分差ものなんです! ヒーローのハリーの敬語に何度萌えたことでしょう……。

そう言えば「ローア」シリーズでわたしを狂わせたクレスリー・コールのヒストリカルも、ライムブックスが出してました。

書ききれなかった作品もあるし、わたしが忘れてる名作もあるでしょう。でも最後にお気に入りのシェリー・トマス「甘いヴェールの微笑みに」で締めます。

美しい未亡人のヴェネチアが、公爵から侮辱されて彼を懲らしめようとするんです。舞台は豪華客船。船上で出会い、でも顔を見せず、誘惑して姿を消す計画を立てるのですが……。350ページくらいで海外ロマンス小説としては短めなので、気軽に読めます。

シェリー・トマスの作品は、大人の駆け引きだったり、暗い過去があるけど懸命に生きていたりと“つらい経験を経てきた大人の男女の恋”という趣きです。「甘いヴェールの微笑みに」でシェリー・トマスを知り、ベルベット文庫の「愛を知った侯爵」も最高に面白かったなー。ベルベット文庫ももう……。

こんな感じで、「ライムブックスで海外ロマンス作家を知る」ということがけっこう多かった印象です。初邦訳かはわかりませんが、近年だとサラ・アダムズやエリカ・リドリー、ウェンディ・ラカプラらはライムブックスで知ったはず。ほかの海外ロマンスレーベルにも言えることですが、(たぶん)売り上げが衰退しているなかで、売れ行きがわからない新しい作家の作品を出すのは勇気がいることなんじゃないかなと思います。こういった出会いが少なくなってしまう可能性を考えるとつらいですね……。

ライムブックスは良書を出していた素晴らしいレーベル

ちょいちょい翻訳ロマンス界隈の暗い話やわたしの「海外ロマンスで知った単語語り」が挟まりましたが、何が言いたかったかと言うとライムブックスは良書を出してくれる素晴らしいレーベルってことです。

原書房のライムブックス担当の方、翻訳者の方、本当にありがとうございました。2005年から18年間、すごく楽しませてもらいました。

最近はKindleで読むことが多かったのですが、12月の新刊「悪魔は壁の花に恋をする」(サラ・マクリーン!)は紙で購入しました。実家に置きっぱなしの本も持って帰ってきて再読しなくては。

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