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「スパダリ住職の屋嶋さんは、嫉妬に狂って焦らし攻めをするドSなケモノでした」鏡井【TLマンガ感想】

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自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回は鏡井さんの「スパダリ住職の屋嶋さんは、嫉妬に狂って焦らし攻めをするドSなケモノでした」です。

「DLsiteがるまに」の乙女向け同人ランキングに入っていたことで本作を知りました。

よくよく考えたら、女性向け作品で「タヌキヒーロー」ってあんまり読んだことない……!と気付き、速攻でポチ。

結果、最高でした。レビューが購入の参考になればうれしいです。

目次

なぜキツネ系ヒーローは多いのに、タヌキ系ヒーローは少ないのか

「スパダリ住職の屋嶋さんは、嫉妬に狂って焦らし攻めをするドSなケモノでした」は、化け狸のヒーロー・屋嶋と、ちょっと天然な人間の女性・灯のラブストーリーです。

このマンガの面白さを語る前に、気付いたことを書かせてください。

タヌキのヒーローって、女性向け作品でめっちゃ珍しくない?

タヌキと対で語られることが多い、キツネタイプのヒーローはけっこう多いですよね。

パッと思いつくだけでも、

  • 「神様はじめました」の巴衛
  • 「お狐様の異類婚姻譚」の白月さま
  • 「妖狐×僕SS」の御狐神くん
  • 「すっくと狐」の唱

などがあります。どれも大好き!

一方、タヌキで女性向け作品のヒーローというと私は「たぬ恋。」しか思いつきませんでした。

タヌキを描いた物語自体は多いですよね。

「女性向け作品」ということを気にしないで例を挙げると、タヌキ作品で最も有名なのは「平成狸合戦ぽんぽこ」「有頂天家族」あたりでしょうか。

調べていて気が付いたんですが、タヌキはヒーローじゃなくてヒロインだったらけっこういるんです。「ラブ・ミー・ぽんぽこ!」「うちの師匠はしっぽがない」「BNA ビー・エヌ・エー」「姫さま狸の恋算用」など。

タヌキとキツネ、どちらも日本の民間伝承や文学において重要な役割を果たす動物ですし、「いたずら好きで人間を騙す」というようなイメージは共通しています。

それなのになぜ、女性向け作品においてキツネ系ヒーローは多いのに、タヌキ系ヒーローは少ないのか。

私は「ビジュアル」「厨二心をくすぐる逸話」の違いが大きいのかなーと思いました。

ビジュアルはキツネのほうが「カッコいい」、タヌキのほうが「かわいい」というイメージ。

キツネは細長くシュッとした体型。色も基本的に黄色やオレンジで映えるし、「黒狐」や「白狐」といった種類も物語ではよく出てきます。

性格も神秘的で妖艶、狡猾なイメージがあって、女性向け作品のヒーロー向きだなあと感じました。

対してタヌキは……こう……「ずんぐりむっくり」みたいな印象がありませんか?(笑)

小さくて丸くて、手足は短くて、瞳はつぶら。色は茶色。

何より信楽焼のたぬきの焼き物のおかげで、おなかがぽんぽこタマタマが大きい(これは「平成狸合戦ぽんぽこ」も影響が大きいかも知れない)イメージがついています。

「厨二心をくすぐる逸話」も、キツネが一歩リードしているのかなと。

キツネは安倍晴明の母とされる葛の葉、殷の妲己や日本の玉藻前のように美女に変化する九尾の狐などが有名です。

タヌキは……タヌキは思いつかない(笑)。

日本の三代化け狸は

  • 佐渡団三郎狸(だんざぶろうだぬき)(新潟県佐渡島)
  • 淡路芝右衛門狸(しばえもんたぬき)(兵庫県淡路島)
  • 屋島太三郎狸(やしまのたさぶろうたぬき)(香川県屋島)

らしいですが、私は「『平成狸合戦ぽんぽこ』で聞いたことあるような……」くらいのぼんやりとした印象(もしかしたら、佐渡や香川などではめちゃくちゃ有名かもしれないのですが……)。

昔話でも「ぶんぶく茶釜」で茶釜に化けたまま戻れなくなったタヌキや、「かちかち山」でおばあさんにひどいことをするタヌキなど、あまり「カッコいい」というイメージはありません。

ということで、「厨二心をくすぐる逸話」があって物語を作りやすく、ビジュアルとしてもカッコいいキツネのほうが女性向け作品のヒーローになりやすいのかなと。

動物系だとオオカミヒーローも多いですよね。キツネと似た理由でヒーローとして選ばれやすいのかなと考えています。

タヌキヒーローって「緊張と緩和」がすごく効く属性なのでは……?

さて、そんな「かわいい」イメージが先行するタヌキがヒーローの「スパダリ住職の屋嶋さんは、嫉妬に狂って焦らし攻めをするドSなケモノでした」。

このマンガ、ラブストーリーとしてもめちゃくちゃ面白いんですが、私は読んでいて「タヌキヒーローって『緊張と緩和』がすごく効く属性なのでは……?」と思いました。

「緊張と緩和」というのは二代目・桂枝雀さんが言った「緊張して、それが緩和されると笑いが生まれる」という趣旨のお笑い理論……と私は認識しています。

「スパダリ住職の屋嶋さん」はお笑いとは関係ないし、私が言いたいのは理論とかそういう大層なことではありません。

タヌキヒーローという愛らしい存在(緩和)のほのぼの描写から動物的な本能を見せる展開(緊張)、その緩急にめちゃくちゃドキドキする……!という意味です。

動物系ヒーローの良さって、

  • 動物的な怖さ
  • 得体の知れなさ
  • 底が見通せない

という、「わかり合えない恐怖心」にあるんじゃないかと思っています。

「人間なら踏みとどまるところを、躊躇いなくアクセル踏むかもしれない」という意味でのドキドキ感。

「タヌキ」というぱっと見かわいい(屋嶋さんのタヌキバージョン、本当にかわいいです)存在が、嫉妬をきっかけに怖い一面を見せてくる。

そのギャップが、キツネやオオカミといった「もともとカッコいい系動物」のヒーローより大きいんじゃないかなと。

ヒーロー視点の悶々描写が最高!

屋嶋さんは本当にカッコいい化け狸です。

柔らかそうだけど筋肉質な、プロレスラーみたいな体型。

タヌキっぽいタレ目。

そして何より素晴らしいと思ったのが、屋嶋さんの片思い(実際は両片思いですが)の内面が最初に描かれていることなんです。

ヒロインの灯の無自覚煽りに悶々とし、それとなく好意を伝えるけど誤解され、挙句にほかの男(当て馬)が登場する。

最初に屋嶋さんの気持ちが描かれているからこそ、嫉妬が引き金になってのTL的展開に突入するときの破壊力が増しています。

異色のタヌキヒーロー、ぜひ読んでみてください。

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