今回レビューするのは、露々々木もげらさんの乙女向け同人マンガ「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」です。
一言で言うと乙女向け限界ドチャエロ。
女性1人と男性2人の組んず解れつ情欲塗れたコメディが展開されます。男性2人の対比が本当に乙女向け同人として素晴らしいってことを全世界の18歳以上の人に伝えたい。
このレビューが購入の参考になればうれしいです。
露々々木もげらとは? ヨールキ・パールキとは?
「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」の作者は、露々々木もげらさん。「ろろろぎ・もげら」と読みます。
「ヨールキ・パールキ」という名称のほうを聞いたことがある人もいるかもしれません。
ヨールキ・パールキとは、露々々木もげらさんが主宰するサークル名。
私が知る限り、2017年7月発売の「冷蔵子ネムの不機嫌な理由」あたりから男性向け同人活動を行なっています。
私は2018年頃、「事故物件×留学生〜四畳半の不可思議な情事〜」でヨールキ・パールキを知りました。
Web広告を見てあまりの絵のうまさと独特さにびっくりし、当時確かDMMブックスでしか読めなかった(と記憶してるけど、曖昧です)から、「事故物件×留学生」を読むためにDMMブックスに新規入会しました。
当時、ヨールキ・パールキ作品は同人CG集がメイン。
同人CG集とは、マンガと違ってコマを割らない「セリフ入りの一枚絵」を基本としていて、表情の差分やセリフのバリエーションなどでストーリーを展開していく形態の作品です。
例えば、CG集に注意書きで「基本CG20枚+差分込み100枚」と記載があったら「異なる一枚絵が20枚あって、表情やセリフの差分を含めて100枚でストーリーを構成してる」って意味になります。
「事故物件×留学生」も同人CG集でした。作中に襖と描き文字だけで構成された一枚絵があって(つまり人物が描かれていない)、それがドチャエロだったんです。描き文字だけでこんなにエロいのわけわからん!と驚いた記憶があります。
それから、「地獄に堕ちても逝きたがり!!」「ラストモール〜首吊男子と肉食女子〜」などを「エロすぎいいい」「絵がぐんぐん上達しすぎいいい」「マンガも描いてくれてるうう」と楽しく読んでたんですが、2022年に始まった「K子と病みおじ」シリーズあたりで「あれ、これけっこう女性向けっぽいな?」「DLsiteだとがるまに(女性向け)で売ってるけど、FANZA同人だと『男性向け』タグがついてるな?」となり。
露々々木もげらさんもそのへんは意識的なようです。
今回レビューする「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」はかなり女性ウケを意識した作品。
ドチャエロを超絶画力で表現して、しかもヒロインが可愛くてヒーロー(2人いる!)もカッコいい。マジで最高です……。
「男性向け」「女性向け」というラベル、性差による好みの違いは生得的/社会的な要因に影響されるし、そもそも個人差があるので分類難しいですよね〜。
「作者やレーベルがどちらの読者をより意識しているか」「男性向け/女性向けの人気作の傾向」あたりで決まるのかなーと思ってます。
私はかなり明確に「女性向け作品」が好みにドンズバなので、露々々木もげらさんが女性向けを描いてくれてめちゃくちゃうれしかったです。
ちなみに「ラストモール~首吊男子と肉食女子~」は無料試し読み版があるので要チェックです!
「ラストモール~首吊男子と肉食女子~」無料試し読み版(DLsite)すべてが対称的な2人のヒーローに翻弄される
「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」のレビューに入る前に、長々と露々々木もげらさんについて語ってしまいました。
来歴に触れたのは一応理由があって、「地獄に堕ちても逝きたがり!!」や「ラストモール〜首吊男子と肉食女子〜」では男性の顔があんまり描き込まれていない(つまりモブっぽい)んですが、「崖っぷちスパイ」ではガッツリ描き込まれてるんです!
たぶん、女性向けを意識してるからだと思います。「K子と病みおじ」の病みおじ、「トイレの地味子とお迎えの獄卒」の獄卒も顔が描かれていて、どちらもがるまにで販売されている(=女性読者を意識している)作品です。
作品によって、意識する読者によって表現を変える試行錯誤、素晴らしいなあ。
エロ描写も、露々々木もげらさんの男性向け作品は肉欲+αでドチャエロ最高〜!という気持ちで読んでいますが、「借金返済RTA」では肉欲+性愛+執着を感じ、萌えます。
ヒーローが2人いるのですが、1人はヒロインに対して明確に恋心があり、もう1人は肉欲が全面に押し出ているけどそれだけではなく庇護欲やキュートアグレッションを嗅ぎ取れる。
「二次元恋愛脳」の私はそういうの大好きすぎて悶えます。
この作品はヒロインの衣(きぬ)が、父親の借金返済のため、鬼上司こと一神千賀弥(いちかみ・ちかや)の命令で日本三大商会の1つ・御影家に潜入します。御影のお屋敷には、なぜかメイド服を着ているメイド長・紫藤月臣(しどう・つきおみ)がおり、不思議なことにいつも衣をじっと見つめてくる。衣はメイド長の視線をかい潜り、潜入の目的である「契約印」をゲットできるのか……?
というストーリー展開です。
ヒロインは崖っぷちスパイこと衣ちゃん、ヒーローは鬼上司と女装メイド(メイド長)の2人です。
大事なのは、ヒーローは2人いるんですが3Pではないってこと。
鬼上司、メイド長それぞれと衣ちゃんがドチャドチャ展開に突入します。
最高……!と思ったのが、鬼上司とメイド長の対称性です。
刺青入りで反社感バリバリの鬼上司に対し、ネタバレになるので具体的には書きませんがお堅いメイド長。
ビジュアルイメージ的にも鬼上司が白、メイド長が黒。
そして性描写も対称的です。
激しめドS(Mでもある)、かつ奉仕させるタイプの鬼上司。
丁寧にねちっこく攻めて甘やかし、奉仕するタイプのメイド長。
両者とのやりとりが、半々くらい描かれています。
ちなみに私は推しを決められない……。どっちもいい!
ただ、社長が衣ちゃんに振られても「切ない〜(涙)(……でも振られるの萌えるな)」という反応なんですが、メイド長がこの後衣ちゃんに振られて衣ちゃんが社長のほうに行ったら私は胸が張り裂けて号泣します。
視覚をジャックされるほどの絵の魅力
絵が本当に魅力的ってのも伝えたくて。
私は「借金返済RTA」初読時、絵が素敵すぎてそれだけで目が楽しくてページをめくってました。
「衣ちゃんの乳がけしからんすぎる」「社長とメイド長の表情〜!!」みたいにキャラばかり追い、3回くらい読んだときに「衣ちゃん、ハンコ(契約印)欲しかったんだ!?」とストーリーラインに気付くぼんやりっぷり。
あまりの絵の魅力に視覚と脳をジャックされてる……!?と驚きました。
どのページもしっかり描き込まれているのに、情報が整理されていて誰が何をしているのかわかりやすい。
あと、「事故物件×留学生」の頃から思っていましたが、今作でも描き文字(特に喘ぎ)の素晴らしさは健在でした。
蕩けたり、欲情したり、震えたり、勢いがあったり、わけわかんなくなってたり、みたいなニュアンスが「とろ♡」とか「グリッ」とかの描き文字から効果的に伝わってきて、画面をすっごく盛り上げてるな〜と思います。
続編も期待できそうなので、本当に本当に楽しみにしています。