普段はティーンズラブや乙女向け同人を中心にレビューしている当ブログ。
今回は一般誌・アプリで連載中の恋愛マンガで、私が本当に本当に大好きな3作を紹介します。この萌えをどこかに書き記したい……という気持ちが抑えきれない。
最初に作品名を書くと、
- 「来世は他人がいい」(小西明日翔)
- 「ホタルの嫁入り」(橘オレコ)
- 「春の嵐とモンスター」(ミユキ蜜蜂)
の3作です。
なぜこの3タイトルかというと、ヒーローに似た匂いを感じているからです。ヒーローはいずれも破滅型。「愛が重い」と形容されることが多いですが、ヒロインに向ける思いは愛なのか執着なのかまったくわかりません。また暴力的な側面がかなり強いことも共通点です。
そして3作品とも売れている。単行本の累計発行部数は「来世は他人がいい」は8巻までで280万部(2023年10月時点)、「ホタルの嫁入り」は3巻までで100万部(2023年12月時点)、「春の嵐とモンスター」は4巻までで120万部(2023年12月時点)。
ヒット作が生まれたあと、似た要素を持つ作品がたくさん出るのは世の常。女子向けマンガで悪役令嬢ものが大流行しているように、恋愛マンガは暴力的な破滅型ヒーローが猛威を振るうのでは……?(最高!)
私が彼らのどこに萌えているのか……? 自分でも整理したく、各作品から「私が何度も読み返してる激ヤバエピソード」をピックアップして紹介します。
「来世は他人がいい」(小西明日翔)
2017年から月刊アフタヌーン(講談社)で連載されている極道ラブストーリーです。
ちなみに私は「来世は他人がいい」のためにアフタヌーンを購入し続けています(もちろん「スキップとローファー」や「青野くんに触りたいから死にたい」も大好きですが)。アフタヌーンは毎月25日発売なんですが、23日くらいからそわそわし始め、24日24時(=25日0時)になった瞬間にKindleで買う。「来世は他人がいい」の単行本はいつでも読めるように電子版をKindleで買い、紙でも読みたいから紙版も買ってる。
今、本誌での展開が本当にヤバいんですよ。私は「来世は他人がいい」が特異なのは、ラブストーリーの主人公である吉乃が全然恋をしないところだと思っていて。好きな気持ちとか恋焦がれる思いとかそういうのは(私には)一切読み取れない。そもそもが相手であるはずの霧島を恋愛対象として見ていない。それなのに恋愛マンガとしてはちゃめちゃに面白いという稀有な作品……と思っていたらですね、6巻収録の第25話でギアが5段くらい上がり、いまアフタヌーンに掲載されてる第38話(9巻収録)なんて「ほええええええええ! そんな一気に!?!?!?!?」と読者に揺さぶりをかけてきました。
このポストを見てください……。
1月14日にこのポストが突然ブッ込まれ、もう私は脳の処理が追いつかずに猫ミームの「はあ?」っていう猫状態。そのあと発売までの10日間くらいはそれが頭から離れず、またまた猫ミームの苦しみ叫ぶ子猫状態で「来世は他人がいい」のことばかり考えてましたね。もちろん紙で買いました。最高でした。
というくらい、「来世は他人がいい」に毎月情緒を握られている私が選んだ「何度も読み返してる激ヤバエピソード」です。テーマは「霧島」。正直、テーマが「翔真」でも同じ温度感で同じくらいの文量書ける。「来世は他人がいい」は巻数が多いのでベスト5を選びましたが、本当に選ぶのに苦労しました。ちなみに既刊の8巻までのエピソードから選んでいます(9巻に収録予定の雑誌掲載話の破壊力が凄すぎる)。
何度も読み返してる霧島の激ヤバエピソード
「悪女、もしくは破滅を呼ぶ女」(3巻収録の第10話)
霧島が吉乃に永遠に囚われることが確定する回です。
その一つ前のエピソード「地獄の三角関係」で吉乃と、彼女と一緒に育った翔真の絆の強さを目にした霧島。自分の感情の機微に疎いのか情緒が未発達なのか、翔真への嫉妬がなぜか吉乃への殺意に変換されるという謎出力を吉乃に指摘されます。そこで初めて自分の感情に気づき、「嫉妬で頭がイカれそうだ」っていう激しいセリフを無表情で言う霧島にもう私はゾックゾクです。
その後、吉乃の機嫌をとるつもりで「自分の生き方を曲げる」提案をするも、それが彼女にとって地雷だったためブチギレられ、そんな吉乃を見て恋心をグッと深める。
自分の異常な言動に対して吉乃が引かないどころか、より異常な言動を見せつけてくるのがツボなんでしょうね……!
ちょっとイっちゃってる表情をした霧島が「永遠にずっと吉乃のことが好きだ」というのもポイントが高い。彼の異常な恋愛観がわかるエピソードです。
「本音を言えば結婚したい 5」(5巻収録の第21話)
全5話ある「本音を言えば結婚したい」は、大阪での一夜の大騒動を描いたエピソードです。吉乃は自分の地元である大阪で騒動を起こしている霧島にブチギレ、売り言葉に買い言葉で「0時までに騒動に決着をつけ、そのあと私にも勝ったら恋人にでもなんでもなるが、できなかったら絶縁する」と宣言します。
吉乃にめちゃくちゃ怒られてるのにまたまたそこにグッときちゃって「俺がこの世で一番君のことを愛してる」「俺以外の男と一緒になっても上手くいかない 絶対に」って言っちゃう霧島には本当に萌え狂って死ぬかと思ったんですが(「本音を言えば結婚したい」の1話目、4巻収録の第17話)、読み返す頻度という点で「5」のほうをチョイスしました。
「5」ではですね、騒動に決着がついたときに吉乃が霧島に「今何を考えてるのか」と聞くんです。そしたら霧島はその大きな手で吉乃の頭を優しく触りながら「片手で捻り潰せそうだ」と言い、そのあと首を掴んで「君のこと甘やかしたいのに たまにめちゃくちゃにしてやりたくなる」と仰天発言。そのすぐあとにコロッと笑って恋人になるための方法を聞いてくる。
(その展開に順応する吉乃が一番ヤバいというのは置いておいて)不安定すぎる!好き!
吉乃に対しての巨大な感情の矢印に、恋情だけでなく暴力的な気持ちも混ざってるのが(私の)不安感を誘い、ドキドキして目が離せないんだと思います。吊り橋効果……なのか……?
「楽しい殴り合い」(6巻収録の第24話)
霧島と翔真がド派手にぶつかり合う回。
吉乃と付き合えたことを誰よりも先に翔真に明かす霧島。ライバル視しすぎて最高!
霧島は吉乃のことが大好きで好かれたいから、吉乃にだけは前のめりで好き好きオーラを出すんですね。でもほかのすべての人間にフラットな態度……と思いきや、翔真への態度もほかの人と異なります。マジで煽る煽る。異様に突っ掛かり、殺意マシマシ。
翔真の「あの人(=吉乃)は俺のもんでもお前のもんでもないんじゃボケ」に対して「負け犬の論理やめてもらえます?」のときの霧島の顔を見てくれ!どんだけ煽り顔がカッコいいんだ!!!
余談ですが、霧島はいつでもどこでも余裕があって大人びていて17歳に全然見えないのですが、翔真と吉乃と相対してるときだけは年相応に見える(ちなみに翔真は20歳もしくは19歳。18歳の吉乃より2つ年上という設定)。
霧島は翔真が吉乃にデコピンしたのを見れば不快感をあらわにし、翔真が吉乃の服に対して「まあまあ」(※)と評したら大反論。とにかく翔真と吉乃のやりとりすべてが気に入らない。
※超長文で語りたいんですが、結論だけ書くと翔真の「まあまあ」は「Very good」という意味です(私の解釈)。
この回は翔真と吉乃の重要エピソードでもあるのですが、霧島が感情をあらわにする回でもあるので、好きすぎて繰り返し読んでしまいます。
あとここで「ぼのぼの汗」の話もさせてほしい。
「ぼのぼの汗」ってのはこれです。
「ぼのぼの」キャラクターの頭の上に汗の表現がありますよね。焦ったときや必死なときに使うマンガ表現です。
霧島が頭上で汗をかく表現の初出は、私のチェックミスがなければ2巻収録の第5話。「赤座しおり行方不明事件」を経て、霧島が吉乃の暴力性に気づき、その恋情を深めた後に初めて出てきました。そのとき、汗は2つ。その後、セフレに対して「自分は吉乃に嫌われてない」ってことを必死に伝えるときにも頭上に汗を2つかいてますし、2巻の特装版小冊子の描き下ろしマンガでも吉乃とのやりとりのなかで同様の表現がありました。
その後そういう表現はたぶんなく、次に登場するのは先述の「本音を言えば結婚したい 5」(5巻収録の第21話)。吉乃の破れたスカートの修復と殴られた顔の手当てをしたくて必死なとき、汗を2つ頭上にかいてます。
ぼのぼのレベルでたくさん汗をかいている表現はこの第24話から。
吉乃が転んだから心配で足首を確認したいとき、頭上に12の汗をかき、同じコマで「吉乃大丈夫?」のセリフにかかるように7つ、「ちょっと足首見せて」のセリフにかかるように8つの汗をかいています。汗かきすぎ。心配しすぎで必死すぎ。かわいい。
その後はかなり頻繁にぼのぼの汗表現が出てきます。つまり、大阪騒動で吉乃のことをより好きになり、付き合った後にぼのぼの汗をかきまくってる。本当に私の解釈ですが、霧島が本気で心配したり焦ったりするのは吉乃のことだけで、霧島は吉乃に対してだけぼのぼの汗をかくんだろうなと。そう考えるとぼのぼの汗、本当に尊い……。
「彼女が翳ると闇夜が降りて雨がふる」(6巻収録の第25話)
霧島が吉乃を本気で怒らせ、3日間シカトされる回。
吉乃の怒りを解こうと一生懸命食べ物で釣ろうとする霧島、吉乃と話せなくて死にそうになる霧島、シカトがつらすぎて偏差値が下がってしまう霧島、ただただ吉乃の部屋の前で待つしかない霧島、ぜんぶいい。
見どころ満載の回なのですが、私が特に好きなのは保釈金の会話。吉乃は霧島からもらったもののをほとんどを新品のまま置いてあるんだそうです。なぜかというと、霧島が何かやらかしたときに保釈金の足しにするため。それを聞いた霧島は「それ俺だけに言ってる? 他の男に言ってないよね?」「他の男にもそんなこと言ってたらどうしようかと…」って吉乃が無自覚で言ってるかわいい言葉に疑心暗鬼に。いちいち翔真の影を感じてしまう霧島、推せる。
この25話は本当に心臓に悪くて、私はここで初めて2人に性の匂いを感じとりました。小西さん、そんないきなりアクセルを……!?ありがとうございます!って焦りましたね。
「君は人生1」(8巻収録の第35話)
小西さんが「マグロで言うところのトロ」とまで言ったエピソードが第35話です。マジでトロでした。
霧島の過去編(少年時代編)では、吉乃への思いの根の深さが明かされます。霧島がなんでそんなに執着してるのかって部分ですね。
霧島の過去が描かれたこのエピソードを読んで、時折ちりばめられていた「小5のときのやばい暴力事件」「深山総長のところに勝手に押しかけたこと」「中1のときに買った新大阪行きの新幹線のチケット」などの謎が明かされ、伏線がビシバシつながりました。
さらに大阪からの帰り道、吉乃の祖父・蓮二の言葉が響き、吉乃が自分にとってどういう存在か“理解って”しまう霧島(と私)……!
このエピソードを読むと、7巻収録の第31話「彼の親切は命より重い 3」で霧島が呆然としながら言った「吉乃が死んだらどうしよう」という言葉がより“理解って”しまう。
もう一度最初から読み返したとき「わかる……わかるぞ‼︎」という快感を味わいました。
「ホタルの嫁入り」(橘オレコ)
2023年1月1日に連載スタートした「ホタルの嫁入り」。小学館のアプリ・マンガワンで読めます。無料チケットで1日4話分読めるので、未読の人はぜひ!
「ホタルの嫁入り」は明治時代を舞台にした、伯爵令嬢・紗都子と殺し屋・進平のラブサスペンスです。
いま単行本は3巻まで出ているので、そこまでのエピソードから「何度も読み返してる激ヤバエピソード」を選びました。
でも第二の男こと当て馬・廉太郎が本格登場した4巻収録分のエピソードが最高だから早く単行本出てほしい。もしかしたら4巻のエピソードのほうが3巻分のエピソードより読み返してるかもしれない。
何度も読み返してる進平の激ヤバエピソード
「望まぬ恩返し」(1巻収録の第1話)
すみません、いきなりですが進平のエピソードじゃないかもしれない!わからない!
本作のキモは、紗都子が余命わずかと言われているところだと思ってます。
進平がヤバい言動に紗都子が全力でつっこんだり逆にスルーしたり……みたいな明るいやりとりも多いんですが、紗都子の体の弱さは本編の至るところで描写され、作品にどこか陰を落とします。
そもそも第1話の1ページ目から不穏で……!
老人の男性が、たぶん紗都子からの手紙を涙をこぼしながら読むシーンなんですが、この老人って紗都子の父親?それともまさか進平が年老いた姿……? となると……どうなるの……?わからん。
紗都子の余命、進平の情緒不安定さと狂気を孕んだ危うい言動、そして幸せにも不幸にもとれる終わり方が最初に提示されていることが不安感を煽ってきて、それが物語のスパイスになってるんです。
なので、物語が進むと「いったいどうなっちまうんだ!?」という気持ちで1話目を読み返し、何かヒントがないか探ってしまう。ただ、この手紙は父親宛だと思うから1ページ目の老人は父親説が濃厚なのかな〜。進平だったらそれはそれで熱いし、なんなら廉太郎の可能性もあるのか……?
という感じで楽しんでます。
「自由にしてあげる」(2巻収録の第9話)
日本中の色町から買い取られた一流の遊女たちが色を売る島・天女島(てんにょじま)。
そこに攫われてしまった紗都子は、進平の助けを得て島を脱出する……というのが当面の目標です。
「自由にしてあげる」は警視総監の息子・新渡戸に身請けされて脱出するという計画が失敗した後のエピソード。進平も銃撃を受けて満身創痍になりましたが、紗都子も血を吐いて倒れてしまいました。
目覚めた後、生来の体の弱さから寝つくことが多い紗都子は、進平に部屋で一人で死んでいく恐怖を語ります。それを聞いた進平が、ホタルを獲ってきて部屋に放し、「これで中(部屋)も外も一緒だ」「どこにいたって俺が紗都子を自由にしてあげる」と笑うのです。
ここで進平の優しさと気遣いにグッとほだされた紗都子(と私)。
でもその後が最低(=最高)で。
進平は紗都子を心配し、布団に戻すために抱っこして一言「今までの子の中で一番軽い」って言うんです。
出た!ノンデリ!
紗都子が「(軽いって言われても)うれしくない」と伝えても「軽いって言うとみんな喜ぶのに」とトドメ。ほかの子も抱っこしているということを仄めかし、ほかの子と比べた上にそれを本人に伝えるという、スパダリだったら絶対しないことを平然とやってのける進平!
ちなみに、進平は第2話でもプロポーズの直後に「今までの女」の話をします。その後もちょくちょく「いつもならこうする」みたいなほかの女と比較するニュアンスの言葉が出てくる。
私、こういう人の心の機微がわからない男が大好きなんです(笑)。
こんな情緒未発達の男なのに、こんな気遣いもできるんだ……?という振り幅にやられるんだと思います。あとは知らず知らずのうちにヒロインを傷つけて、いつか痛い目にあってほしいという気持ちが湧いてきてページをめくる原動力になる。
進平は、紗都子に執着しているというか「結婚」に執着しているように読めます。進平にとって結婚がどういう意味を持つのかまだわからないのですが、紗都子じゃなくて結婚にこだわってるということが紗都子本人に伝わっちゃってるところもひどくていい(笑)。
まあ紗都子も紗都子で島から脱出するために進平を利用しているので、そこまで「紗都子かわいそう!」という感情にはなりません。
紗都子を気遣ってホタルを部屋に放す進平と、ノンデリ発言を何気なくしちゃう人の気持ちがわからない進平の二面性がツボるエピソードです。
「痛み」(2巻収録の第12話)
進平の幼稚性と執着が存分に現れた回。
ギクシャクしていた紗都子と進平が納屋に閉じ込められ、お互いの気持ちを伝え合います。
進平は「昔から相手の感情も自分の感情も読むのが苦手」と明かした上で、紗都子が悲しむことはしたくないからと紗都子の機嫌が悪い理由を聞きます。やっぱり「今までの子」とか「ほかの子」とかの話も出てくるんですが、紗都子に惹かれている理由も不器用ながら伝えていて超可愛い。
で、ほだされていた紗都子が、罪悪感から進平との結婚の約束が嘘であることを話すんですね。
進平は当然ながら怒って、紗都子を見捨てたり脅したり。
それでも紗都子が折れずに結婚できない理由を素直に話すと、進平は説得を諦めて「紗都子の結婚相手が見つかるたびにそいつを殺していく」という殺し屋ならではの結論に達します。最高。
紗都子が進平に「島から脱出できたら進平から逃げる」と伝えたら、「足は速いから捕まえられる」って言うところもツボ。小学生男子かな。
試し行動をするところや「そうはならんやろ」って結論に達するところに幼稚性が見られて本当に胸がキュンとするんですが、このあたりから「結婚への執着」が「紗都子への執着」に変わってるようにも思えてたまりません。
また紗都子とのやりとりではそういう子供っぽさが出るんですが、ライバルの廉太郎が登場した4巻収録分では敬語を使って探りを入れたり薬を盛ったり意外と搦め手も使えるんだなと、違う一面が見られてより好きになりました。いろんな面を見せてくれ……!
「春の嵐とモンスター」(ミユキ蜜蜂)
花とゆめ(白泉社)で連載中の「春の嵐とモンスター」。
他人と関わらずに空気のように生きていたい嵐子が、母の再婚相手の息子・栢(かや)と出会ったことから始まる義姉弟ラブコメディです。
ミユキ蜜蜂さんの、マイペースで生意気な年下男子への解像度の高さは前作の「なまいきざかり。」で知っているつもりでしたが、「まだまだ引き出しがあるんだよ!!」とばかりにぶち込まれた「春の嵐とモンスター」。成瀬よりも幼くて暴れん坊でメンタルがヘラってて繊細なモンスター・栢くんの魅力にやられています。というか、不安にさせられています(笑)
4巻まで発売されているので、そこまでのエピソードから「何度も読み返してる激ヤバエピソード」を選びました。
何度も読み返してる栢の激ヤバエピソード
「DAY6」(2巻収録)
中学3年生だけど学校にはほとんど行っておらず、夜遊びを繰り返してガラの悪い連中とつるみ、蜂と蚊の区別もつかずに蜂を手づかみしちゃう栢。
嵐子の母親の再婚相手・天峰の息子だと思いきやそうではなく、実はあちこちをたらい回しにされて天峰のもとにはつい先日やってきた、という複雑な事情の男子でした。
嵐子が夜遊びをしている栢を迎えに行ったり、栢のために泣いたりしていたら栢の“特別”になっていた……というのが1巻。最高のラブストーリー導入すぎてむせび泣いた。
そして2巻に収録された「DAY6」で、ついに栢は嵐子と同じ高校に行きたくて勉強を始めます。えらい!
しかも同じ高校に行きたい理由は「嵐ちゃんがすきだから」。かわいい!
でも栢の「すき」は「付き合いたい」という意味ではありませんでした。
栢にとって「お付き合い=会ってヤる」という認識。
いままでどんなコミュニティにいたのかが偲ばれますね。
なんかもう、嵐子がやってることはほとんど福祉なのでは……と思いつつ、自分を心配してくれる人の存在によってどんどんいい方向に変化していく栢に涙する最高の回です。マジで何度も読んでる。
「DAY12」(3巻収録)
そんなこんなでずっと不登校だった栢が、ついに中学校に通うようになったよ!学校行事のドッジボール大会にも出るようになったよ!な回。
嵐子との約束があったため、むかつくクラスメイトがいても暴力を我慢できた(けど語彙力がなくて思うように罵倒できなかった)栢に拍手を送り、ドッジボール大会で活躍したことを嵐子に褒めてもらってうれしい栢を見て泣きながら頷く私。中学生っぽいことをしてる栢、必見です。
余談ですが3巻はマジで神がかったエピソードが多くて。40度の高熱が出てることにすら気づかず(風邪について無知だから)、「治る」という言葉を知らなくて「戻る」と言っちゃう「DAY11」や、クラスメイトの男子から連絡が来た嵐子に抗議するために行方不明になっちゃう“メンヘラ大暴走赤ちゃん”「DAY15」も本当に見どころです。やばい男が好きという自覚はあったんですが、“メンヘラ大暴走赤ちゃん”の良さは知りませんでした。蒙を啓いてもらった気分です。新しい地平を見た。
「DAY18」(4巻収録)
南須という嵐子の同級生男子が嵐子のことを好きになり、栢くんはまたまた不安定に。
「恋愛も友情もうすっぺらいゴミくず、歪んだ世界の中で嵐ちゃんだけがきれい」という昔のヴィジュアル系みたいな栢の独白が光る、どんどん嵐子への執着を深めていく回です。
南須があまりにもまっすぐ育った陽の者で、栢との対比もいい。
私見ですが、花とゆめの連載作なので栢が嵐子と2人だけの狭い世界を築きたくても、きっと前向きである程度健全な方向に進んでいくと思います(これががるまに作品とかだったら2人の世界が完成されたかもしれない)。
栢にとって成長せざるを得ない展開が今後待ってるはず。この「DAY18」で、栢は(たぶん)初めて同級生と放課後にゲームをするという体験をしました。二次元恋愛脳的には嵐子への執着をもっともっとどんどん深めていってくれ……!という感じなんですが、複雑な家庭環境の中学生が年相応の経験ができるのは素晴らしいよね、と考える現実な大人な自分もいます。
なんにせよ、栢が幸せになってくれたらそれでいい。