自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回は桜井さくやさんさんのTL小説「ワケあり紳士は初恋に溺れる」です。このレビューが、購入の参考になれば幸いです。
あらすじ
だめだ、我慢できなくなってしまう。
その日、シャロンがいつものように夕飯の支度をしていると、ひどい怪我を負った男が家にやってきた。男は『ラン』という名前以外、自分が何者か覚えていない様子。シャロンは反対する家族を説得し、彼の面倒を見ることに。急速に惹かれ合う二人。一線を越えるのに時間はかからなかった。熱い眼差しに優しい愛撫、何度も絶頂に導かれ、幸せな一夜を過ごすシャロン。彼が何者でもずっと一緒にいたい。そう思った矢先、ランの過去を知る者が現れて──!?記憶を失った美貌の紳士×お人好しな町娘、純愛からの執着愛!
https://www.sonyabunko.com/books/9784781696300/
見どころは……父親!?
「ワケあり紳士は初恋に溺れる」は、1冊で2度美味しいタイプのお話です。
前半はお人好しな町娘・シャロンと、記憶喪失の男・ランの純愛。
後半は記憶を取り戻したランの、シャロンへの執着愛。
これが1冊で味わえます。
前半の見どころは、シャロンとその家族です。
私はTLを読むときは基本的にカップルにばかり注目しているのですが、この物語は素直でお人好しのシャロン、その様子を温かく見守る父親と兄の関係が目を引きました。
TLのヒロインって、天涯孤独だったり、親がいてもすごく影が薄かったりそもそも登場しなかったりするイメージがありませんか? もしくは娘を売ったり虐げたりするようなひどい親、借金や没落など不幸のきっかけを作るダメな親というケースも多いと思います。
邪魔者or存在感ゼロみたいな。
ヒロインの恋の障害、もしくはヒロインの不幸の象徴みたいな役割が多いので、「ワケあり紳士は初恋に溺れる」の“頼り甲斐があり、娘を大事にするいい父親”をすごく新鮮に感じました。
父親と兄、そしてランの不器用ながら温かい交流にもほっこり。
前半で描かれたシャロンとランの純愛を引き立てます。
(でもシャロン、お父さんは結婚は許したかもしれないけど物置小屋であれこれすることまでは許してないと思うよ……笑)
ベッドから出さない“わからせ”
そしてランの前半と後半の変貌も見どころの1つ。
前半のランは紳士。シャロンをさりげなくエスコートしたり、素直に感情を表現したりと穏やかな人柄が印象的です。
後半は冷酷な貴族。でも、シャロンだけは相変わらず大事にします。ヒロイン“だけ”っていうのはやっぱりツボ。彼女以外にはどう思われてもいい、という心情は何度読んでもいいですね。
物語の白眉はベッドから出さない“わからせ”でしょうか。
「天は赤い河のほとり」でも、ユーリが現代に帰らなかったことに浮かれたカイルが何日もユーリをベッドに閉じ込め、ユーリが「今は朝? …それとも夜なの…?」と時間感覚がなくなる名シーンがありました。
記憶を取り戻したランは、シャロンの些細な言葉に反応し不安定に。ベッドから4日間も出さず、愛の重さ・執着をわからせます。「天は赤い河のほとり」とはヒーローの心情がまったく異なるのですが、“寝室に監禁”は萌えます。
こういうのが読みたくてTL読んでる。
「ワケあり紳士は初恋に溺れる」は「歪んだ愛は美しい。」をキャッチフレーズとしたソーニャ文庫の作品でして、なんとソーニャ文庫は2023年2月で創刊10周年とのこと!
そんなに長く、“歪んだ愛”を私たちに提供し続けてくれてるんですね……!
本当に感謝!
10周年を記念した電子書籍フェアを2023年2月2日から2月15日まで実施していまして、私は「ワケあり紳士は初恋に溺れる」を半額で買いました。
フェアの第1弾が「貴族・騎士の偏愛!」だそうなので、きっとこの後もフェアが続くことでしょう。注力して追いかけたいと思います。
フェア第1弾はこちらから(Amazonに飛びます)。