TL、近年本当に盛り上がっています。10年くらいTLを読んできた自分の視点で、TLとは何かを解説したいと思います。
TLってなんだろう?
TL(ティーエル)とは、出版業界においては「ティーンズラブ」の略です。
「タイムライン」の略じゃないよ!
女性向けマンガのいちジャンルで、性表現に重点を置いた男女愛を描くことが多いです。つまりエッチシーンありの男女のラブストーリーですね。
ただ「性表現に重点を置く」といっても程度はさまざま。
いわゆる男性向けエロマンガのように、かなり過激な性描写が中心となる作品から、性描写にページが割かれるものの、そこに至るまでの過程や心の機微を軸に描いた作品まで、性的なシーンをどの程度、どういうふうに表現するかにはグラデーションがあります。
表現媒体としては、マンガと小説が2大ジャンルと言っていいでしょう。マンガ・小説ともに、商業と一次創作(同人)に分けられます。
TL2大ジャンル「マンガ」:商業編
「どの作品がTLで、どの作品がTLじゃないのか」というのはかなり主観が入るので一概には言えないのですが、明確に「TLレーベル」と謳っていたり、「エロ / エッチ / エロス / H」「オトナ / 大人」というワードをキャッチコピーに入れている雑誌・レーベルはたくさんあります。
商業マンガだと、こちらの雑誌やレーベルの掲載作品はTLと呼べると思います。
またTLをメインにした雑誌やレーベルじゃなくても、TL作品が掲載されていることもあります。
例えば一迅社のゼロサムオンラインや白泉社のマンガPark。この2つにはさまざまなジャンルのマンガが掲載されていますが、その中でもマンガParkの「夜明けを乞うけものたち」(堤翔)はTLと銘打っていますし、ゼロサムオンラインの「どうせ捨てられるのなら、最後に好きにさせていただきます」(セレン / 碧貴子)、「悪役令嬢と鬼畜騎士」(生還 / 猫田)などもTLと言えそうです。ゼロサムオンラインはWebサイト掲載時には性表現が抑えめなのですが、単行本化の際にRシーン(性的なシーンのこと)が大幅に描き下ろされます。
TL2大ジャンル「マンガ」:同人(一次創作)編
出版社などを通さず、個人クリエイターが自分で作った女性向けのR-18作品も「TL」と呼ばれることが多いです。「乙女向け」もほぼ同意義で使われます。
そういった同人(特に一次創作)作品は、現在だと「DLsiteがるまに」「FANZA同人」で販売されていることが多いです。
特に「DLsiteがるまに」はここ数年で飛躍的にユーザーを増やしました。それに呼応するようにクリエイターも「DLsiteがるまに」で作品を発表することが増えています。
下の図は、2021年に「DLsiteがるまに」を運営するエイシスが発表した売上高です。「DLsiteがるまに」だけでなく「DLsite」全体に関するデータですが、かなり盛り上がっていることが読み取れます。
この1年で新規に会員登録したユーザー数は200万人と増加。その結果、全体の会員ユーザー数は620万人(2021年4月末時点)となりました。
また、作品制作・登録販売をされるサークル(クリエイター等)の登録数が累計で5万を超え、国内最大級の二次元総合ECプラットフォームとして成長し続けております。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000165.000042966.html
2023年2月現在、「DLsiteがるまに」で発表されたTL作品の商業レーベルでの単行本化が相次いでいます。「dog eat dog era」「さっちゃん、」(※商業の単行本は「うついくん、」)「異世界トリップ先で助けてくれたのは、人殺しの少年でした。」「片端の桜」「燕嵐閨中顧話」など。出版社もかなり注目していると思うので、今後もこの傾向は加速しそうです。
TL2大ジャンル「小説」:商業・一次創作編
小説でもTLは人気です。
TL小説は、作家さんが編集部からの依頼で単行本用に書き下ろしたものと、作家さんが個人的に小説家になろうやアルファポリスなどの投稿サイトにアップした作品を出版社が単行本化するものの2パターンに大別できると思います。
私は単行本用に書き下ろした小説のほうが読み応えがあるものが多いと思っています。決められたページ数があり、1冊の中での盛り上がりを考えるから山場が計算されており、起承転結がしっかりしている気がします。
では投稿作を書籍化したものが面白くないのかというと、まったくそんなことはありません。そもそも投稿サイト内で面白くて人気が出たから書籍化されますしね。好きな作品が書籍化されるとすごくうれしいものです。多くの場合、単行本用に加筆・修正されているので投稿サイトで作品を読んでいても「書籍版を買ってよかった~!」と思います。
投稿サイトで自分が楽しく読んでいた作品が書籍化されると、「認められてよかった」みたいに後方彼氏面をしてしまう自分がいます。
さらに近年の傾向として、すでに商業でデビューしている作家さんが投稿サイトで作品を発表し、それを出版社が単行本化する、というケースも多々見受けられます。
有名投稿サイトは、小説家になろう内の女性向けR-18レーベル・ムーンライトノベルズと、アルファポリス、それからベリーズカフェなどでしょうか。人気作はすでにかなり書籍化されている感がありますが、投稿数も多いのでまだまだ“あまり知られていないけどめちゃくちゃ面白い小説”を探せそうです。
TL小説はコミカライズも盛んに行われています。TLマンガの箇所でも言及した「どうせ捨てられるのなら、最後に好きにさせていただきます」(セレン / 碧貴子)、「悪役令嬢と鬼畜騎士」(生還 / 猫田)は、どちらもムーンライトノベルズの投稿小説が原作です(正確に言うと、投稿小説を書籍化したものが原作)。
TLは「小説→マンガ」の相性が良く、相乗効果でお互いがいい宣伝にもなっています。「小説が面白かったから、マンガ版も読んでみよう!」もしくは「マンガ版が面白い! 早く続きが読みたいし、小説にも手を出してみよう」となりやすいんですね。
アニメ化も!? メディアミックス編
TL作品はアニメ化もされています。
「僧侶枠」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
2017年に放送されたアニメ「僧侶と交わる色欲の夜に…」をはじめとする、AnimeFestaオリジナルの放送枠のことです。
ちなみに「AnimeFestaオリジナル」はウェイブという会社が制作したオリジナルアニメ作品を指します。「僧侶と交わる色欲の夜に…」が放送されていた頃は、「ComicFestaアニメ作品」と呼ばれていました。また「AnimeFesta」はウェイブが運営する、アニメのサブスクリプションサービスです。
このアニメ枠では、同じくウェイブが運営するスクリーモのTLやBL作品をアニメ化し、放送しています。
例えば2023年4月からは「漣蒼士に純潔を捧ぐ」が放送されます。この原作は「漣蒼士に処女を捧ぐ~さあ、じっくり愛でましょうか」(村上晶)。スクリーモのTL作品です。
アニメ以外にも、相性の良い媒体として音声ドラマ、ゲーム、Webtoonなどが挙げられます。特に音声ドラマはいろいろリリースされています。
実写ドラマ化は難しいと思うのですが、TLではないものの似た読者層が読んでいそうな「恋と弾丸」(箕野希望)が、古川雄大さんと馬場ふみかさんのW主演でドラマ化されています。今は地上波に流さない配信ドラマなどもありますので、内容次第では実写ドラマ化もあり得るのかもしれません。
まとめ
この記事のまとめです。
- TL(ティーエル)とは「ティーンズラブ」の略。
- ティーンズラブとは、女性向けマンガのいちジャンル。性表現に重点を置いた男女愛を描くことが多い。
- 「どの作品がTLで、どの作品がTLじゃないのか」というのはかなり主観が入る。
- 表現媒体としては、マンガと小説が2大ジャンル。
- TL作品はアニメ化もされている。
というわけで、TLを10年くらい読んでいる私の目から見たTL解説でした。自分のアウトプットも兼ねているので、もしまったく見当違いなことを言っていたらこっそりご指摘いただけるとうれしいです。