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「八禄荘-家檻と花辱の嫁-」鬼遍かっつぇ【TLマンガ感想】

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「dog eat dog era」シリーズで一世を風靡した鬼遍かっつぇさんの「八禄荘-家檻と花辱の嫁-」の自腹レビューです。タイトルは「八禄荘(はちろくそう)-家檻(いえおり)と花辱(かじょく)の嫁-」と読みます。ほんっとうに萌えるので18歳以上の人はぜひチェックしてみてください。このレビューが、購入の参考になれば幸いです。

目次

箱庭で純粋培養された少女と、ミステリアスな家庭教師の青年

「六麓荘町」ってご存知ですか?

「ろくろくそうちょう」と呼びます。「東の田園調布、西の芦屋」と呼ばれる日本屈指の高級住宅街・兵庫県芦屋市にある町の名前です。高級住宅街として有名な芦屋の中でも特に高級なのが六麓荘町で、独自基準の建築協定があり、コンビニもマンションも自販機も電柱もない。新築や増改築をするには町内会の承認が必要です。

昭和初期に、香港島の白人専用地区をモデルとして「東洋一の別荘地」をコンセプトに開発されたとか。

街全体が浮世離れしていて、庶民には窺い知れないというか下賎の私は拒まれそうというか(笑)、自分には一生縁がないだろう……と思わされる地域です。

鬼遍かっつぇさんの新作乙女向け同人「八禄荘(はちろくそう)-家檻(いえおり)と花辱(かじょく)の嫁-」は、たぶんそんな六麓荘町からインスピレーションを受けている作品です。

はっきりとは書かれていません。あとがきにインスピレーションを受けたものとして「某地の高級邸宅街」とだけありますから、間違っている可能性もあります。

なぜ最初に六麓荘町の話をしたかというと、私はこの物語にとって「舞台設定」が大切な要素だと思い、自分の解釈を忘れないために書き留めておきます。

物語の舞台は、富裕層の中でも限られた人間のみが居住を許される高級邸宅街の八禄荘。その中にある1軒の日本家屋です。

ほぼ敷地内という閉鎖的な狭い範囲で物語が進み、登場人物はヒロイン・紫(ゆかり)と家庭教師の透のみ(透の父も登場しますが数コマです)。

八禄荘で生まれた子供は学校へは行かず、男子は16歳になると社会化の一環として進学して八禄荘を出ることができ、女子は16歳になると親の決めた相手と結婚することが通例とされています(めちゃくちゃ念のためですが、この辺りの設定は六麓荘町とはまったく関係ありません)。

そんな箱庭のような環境で、紫は両親とも離れてたぶん1人で暮らしています。

彼女は八禄荘を出て、学校へ行くことを切望していました。両親に学校へ通いたいという希望を伝えて、代わりに来たのが謎めいた家庭教師の透。透は紫の家に住み込み、2人暮らしが始まります。

文学的、インモラル、浮世離れ、閉鎖的、レトロが混ざり合う

「八禄荘」の魅力は「雰囲気」にあると思っているのですが、作品全体に漂う雰囲気をどう表現したらいいのかわかりません。

ヒロイン・紫による、ですます調のモノローグが多用されていて、文学的な雰囲気を醸し出しています。

がるまにの乙女向け同人でいまや欠かせないエロ描写は、鬼遍かっつぇさんの出世作「dog eat dog era」で見せつけたハードな描写と比較すると、「八禄荘」では少しおとなしめ(それでも断面図とかはありますし、けっこうがっつり挿入してますが笑)。「エロい!」というよりも、絵としての美しさが際立つ見せ方になっていて、少女と青年のインモラルな雰囲気が強調されています。

時代設定も曖昧です。

紫と透の服装、家屋、喋り方、生活習慣からは「近現代っぽい」という情報しかわからず、レトロな雰囲気

一応、紫は三鷹にあるアニメの美術館に行きたいという夢があって、そうなると2001年以降なんですがまあファンタジーでフィクションですしね。

舞台設定は最初に書いた通り、どうにも浮世離れしていて閉鎖的な雰囲気の、優雅な階級社会がいまだに残る場所。

「文学的」「インモラル」「浮世離れ」「閉鎖的」「レトロ」という要素が混ざり合い、独特の雰囲気を生んでいます。

おかっぱ頭の男は全然好みじゃないのに……!

ヒーローの透とヒロインの紫の関係性は、光源氏計画を参考にしているとのこと。

透が冷静に考えるとやばい男で。

何にも熱くならなそうなミステリアスな雰囲気なのに、最後まで読むと紫への昏い執着が垣間見えます。

紫は、純粋培養で育てられた少女。

物語では、「紫が障子を開けて透を部屋に迎え入れる」というシーンがキーになっています。これは父親の決めたルールを破って「父に逆らうこと」=「大人になること」の暗喩なのかなあ……と思っています。

一方で、何にも囚われていなさそうな透も実は家父長制度からまだ自由ではない。

紫と透、お互いが「家(と家父長制度)」という檻に囚われています。

読み終わってすぐ、「続きが読みたい〜!」と思いました。

読み切りとしても綺麗に終わっていますが、「物語の序章」でも問題ない感じに語られていないことが残されていそう。

特に透の内面を知りたい……!

おかっぱ頭の男は全然好みじゃないのに、透のことを知りたい……!

もし続編が出たら小躍りして喜びます。

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