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「それなりに幸せです、たぶん 美しき公爵の盲目的執愛」(イチニ / ウエハラ蜂)身勝手な愛し方をしていた激ヤバ男の成長に涙【TL小説感想】

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自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回はイチニさんのTL小説「それなりに幸せです、たぶん 美しき公爵の盲目的執愛」です。このレビューが、購入の参考になれば幸いです。

目次

あらすじ

「君と離縁する」〝転落事故〟で大怪我を負った伯爵令嬢のイルザは、八歳から婚約者だった公爵家のアーベルに、昏睡から目が覚めて早々離縁を告げられる。少し淡泊なくらいで他はいたって平凡なイルザが、つり合わないと言われながらも美貌と優秀さを持つアーベルと結婚したのは、彼が異常なほどイルザに執着し、身勝手なほど愛情を注いできたせいだというのに。離縁の申し出を仕方なく受け入れたイルザだったが──。「今度こそ、誰にも君を傷つけさせたりしない」これまでとは違う態度に戸惑うが、冷酷な男が自分にだけ向ける熱い情欲と偏愛に、ぞくぞくと劣情が沸き上がって……。

https://www.j-publishing.co.jp/tullkiss/book-16985/

Q.こんな男にときめくの? A.ときめきます

3次元ではぜっっっっっっっっったい無理なヤバい男ほど、2次元だと愛せる。

そういうことありませんか?

「それなりに幸せです、たぶん 美しき公爵の盲目的執愛」のアーベル・シュテイツは、2次元限定の本当に愛しいヒーローです。

アーベルのプロフィールを書きます。

おそろしく華やかな容姿。王の甥っ子で公爵家の嫡男。幼い頃から文武両道。王太子の信頼も厚い。

顔がよく、実家も太く、優秀で将来有望。完璧に思いますよね? でも、この完璧さが吹き飛ぶくらいの異常な執着心でヒロインのイルザを愛してきます。

愛するならいいんじゃない?と思うかもしれませんが、その干渉と束縛はかなり鬱陶しい。イルザは学校に行けず、社交もできません。

アーベルは幼なじみともいえるイルザに幼い頃から執着しており、イルザがいないと極度に不安がります。イルザに拒否されると、自傷行為に至ります。

イルザを愛してはいるのですが、かなり身勝手な愛し方なのです。

そんな男にときめくの?萌えるの?って思う方もいますよね。ときめくし萌えます。

こんなにヤバい男なのにニヤニヤしながら楽しく読めるのは、ヒロインのイルザの性格がアーベルの性格と不思議なケミストリーを起こしているからだと思います。

イルザはあのアーベルと幼い頃から一緒にいて、束縛と干渉をされてきたのが影響しているのか、淡白で諦めがいい。自分でも「やや薄情寄り」と認識しています。

イチニさんの書くヒロインは、いい意味でけっこう粛々と自分の運命を受け入れるタイプが多いのですが、イルザもその1人です。

なので、アーベルの干渉と束縛を「鬱陶しい」と思いながら受け流します。アーベルは盲目的と言えるほどイルザに執着しているのですが、意外と冷静に見ている部分もあり、イルザが自分をあしらっているのもわかっています。

イルザが場を収めるため、アーベルに「会えてうれしい」的なことを棒読みで言う場面があるのですが、そのときアーベルは

「嘘つき……でも嘘でも嬉しいから……ずっと、永遠に、騙していてほしい」

と言うんです。めちゃくちゃ萌えました。イルザがくれるなら、嘘だってうれしいんです。騙されてるってわかってるけど、かまってもらえるだけで喜ぶ。かわいい。

身勝手な愛し方をしていたアーベルが、イルザのために変わる

アーベルの愛し方を「かなり身勝手な愛し方」と書きましたが、「それなりに幸せです、たぶん 美しき公爵の盲目的執愛」の一番の見どころは、アーベルの成長です。

物語は最悪な状態から始まります。大怪我を負って昏睡状態だったイルザは意識を回復した瞬間、夫であるアーベルに離縁を告げられます。そしてアーベルは即、別の女と再婚。

えええええええ!?!?!?!? なんで? どして? どうなっちゃうの????ってなったら、もう物語の虜です。

今回このレビューを書くために読み直したのですが、何度も読んでいるのに続きが気になりすぎてページをめくる手が止まらず、次の日に仕事があるにもかかわらず夜を徹しました。導入が特に素晴らしい。

もちろん、アーベルの行動には理由があります。詳しくは「それなりに幸せです、たぶん」を読んでほしいのですが、身勝手な愛し方をしていたアーベルが、イルザのために変わるのです。

アーベルは自分の不安な心を優先し、イルザを支配しようとしてきました。叶わなければ自分(アーベル)が死ぬという、ほとんど脅迫に近いやり方も(特に真冬の湖の上でのプロポーズシーンなど……)。そんな男が、イルザの幸せを考えて行動するようになるんです。その姿が本当に健気で……。

がんばったね……。

アーベルは、もしかしたら人によっては地雷かもしれません。他の女と再婚するし、イルザに会えなかったためやつれ過ぎて円形脱毛症になるし、イルザと軽くキスしただけでズボンの中で放精してしまいます。TLヒーローとしてはけっこう異色。ただ、私はめちゃくちゃ楽しく読みました。私にとって「他の女と結婚」がかなり地雷設定なのですが、この話では全然気になりませんでした。その結婚に愛がないのが丸わかりだからかな……。

ムーンライトノベルズでも読めます

作者のイチニさんは、情けないけれどカッコいいところもある一途なヒーロー、そして不遇(だけど本人は意外と淡々としている)のヒロインを描くのが抜群にうまいです。

私は小説家になろうの「出戻り王女と一途な騎士」で初めてイチニ作品と出会い、貪るように読みました。「出戻り王女と一途な騎士」は「出戻り(元)王女と一途な騎士」とちょっとだけ改題して書籍化もされています。めちゃくちゃオススメです。2023年2月時点ではKindle Unlimitedの対象でもあります。

TLだと「イチニ」名義ですが、他では「御鹿(ごろく)なな」という名義で活動しています。

御鹿なな作品でオススメは「王女様に婚約を破棄されましたが、おかげさまで幸せです。」。こちらも2023年2月時点ではKindle Unlimitedの対象。

「それなりに幸せです、たぶん 美しき公爵の盲目的執愛」はイチニさんの初めての商業化作品で、「出戻り王女と一途な騎士」でファンになっていた私は「それなりに幸せです、たぶん」の書籍化が決まったときにすっごくうれしかったのを覚えています。

「それなりに幸せです、たぶん」は、小説家になろうのムーンライトノベルズ(女性向けのR18小説サイト)で連載されていました。今でも読めますので、気になる方はぜひ。

商業版は電子書籍版と紙書籍版があり、ムーン版からかなり加筆されています。

私は電子書籍版を買っています。個人的には商業版がオススメです。ムーン版にはなかったアーベル視点のエピソードが追加されていて、より楽しめます。また「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない」のときも書きましたが、イラストが大好きなウエハラ蜂さんで……。ウエハラ蜂さんの素晴らしい挿絵でアーベルとイルザのビジュアル解像度が爆上がります。こりゃあイケメンだわ……。素敵なイラストが付くのも、商業版の強みです。

電子書籍版には収録されていないSSがムーンライトノベルズに掲載されているので、もし未読の方はこちらもぜひ。

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