自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回はクレインさんのTL小説「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける」です。コミカライズが連載中、そして続編の発売も決まっている人気作! このレビューが、購入の参考になれば幸いです。
「年下ツンデレ美少年」が「年上ヤンデレ美形」に?
あまりにも設定が秀逸な小説を紹介させてください。
クレインさんの「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける」です。
どういった設定が秀逸なのか。
それは「年下ツンデレ美少年」が「年上ヤンデレ美形」になることです!
属性モリモリなのでどれに注目していいか迷うかもしれませんが、「年下の少年が年上になる」という設定が肝です!
あらすじを説明します。
ヒロインのララは24歳の国家魔術師。弟子である12歳の少年・アリステアを守るためドラゴンに立ち向かい、死を避けるため魔法で石像になってしまいました。
石像の魔法はいつ解けるのか、そもそも解けるのかすらわかりません。
幼いながらも莫大な魔力と才能に恵まれていたアリステアは自分の慢心を後悔しながら、善性の強かったララのため、世界をよくしようと死んだように生きていました。
そして20年後、なんと石像の魔法が解けました。石像になっている間、ララの時間は止まっているので24歳のまま。当然ながらアリステアは20年歳をとっています。そう、12歳の美少年は32歳の美形になっていたのです。
つまり、24歳と12歳で12歳差があった師匠と弟子は、24歳と32歳の8歳差となり、しかも弟子であるヒーローが年上に。
ありがてええ!
というのは、自分が年齢を重ねたからか、少女時代は楽しめていた「大人と子供のカップリング」に素直に萌えられなくなってしまっていまして。
2次元だから割り切って楽しみたいのですが、TLに限らず「先生と生徒」みたいなカップルのお話を読むと、ふと冷静になる自分がいます……。全然いいんだけど致すのはカップリングの子供のほうが大人になってからでよろしくお願いします!みたいな。
そこでこの年齢逆転設定です。少年時代を書いてくれているから成長も堪能でき、年齢が逆転したとはいえ気持ち的には年下だからヒーローの年下属性も楽しめて、なのに実際は年上で、アリスはララに対してずっと敬語で、物語が本当の意味でスタートするのは年齢が逆転してから。
もう組んず解れつなんでも好きなだけいろいろしてくれ……!
そもそも、クレインさんはツンデレ美少年を描く名手だと勝手に思っています。
クレインさんの初期作に「黄金と鍍金」という小説があるのですが、そちらもツンデレ美少年がヒーローです(ありがたいことにこちらのヒーローも成長する)。ヒロインは男装賢女。ツンデレ美少年の成長が素晴らしくて。この小説も本当に面白くてオススメです。
ツンデレ美少年の慟哭、かわいそう萌え
「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない」で一番萌えるのは、アリステアの健気さ。
世界は幼いアリステアにまったく優しくありませんでした。だからたぶんアリステアは世界に特に興味はなく、人間なんか憎みたいのにララという存在がそれを引き止めます。
唯一の光だったララを失ったときのアリステアの絶望は、察するに余りあり……めちゃくちゃ萌えます。
ツンデレ美少年の慟哭、かわいそう萌えしてしまう。
ララが石像になってしまった後も、いつか目覚めたララに褒めてほしいという健気な思いだけで領主となり、善政を敷きます。
そしてララの石像化が解けた後、アリステアは少年の頃に拒んでいた「アリス」という可愛い呼び名や、ララからの同情すら乞うようになるんです。ララがくれるものならなんでもほしいという渇望。
「今はまだ、あなたのお得意の同情でも構いませんよ。──ほら、私はかわいそうでしょう?」というセリフ、素晴らしすぎて頭を抱えました。
健気で切ないアリステアの思いが堪能できます。
「刀剣乱舞」絵師でもあるウエハラ蜂さんがイラスト
イラストはウエハラ蜂さん。最高!
TL小説は本当にイラストレーターが重要だと思っているのですが、TL小説のイラスト担当がウエハラ蜂さんだと買ってしまいます。
「刀剣乱舞ONLINE」の太郎太刀と笹貫のキャラデザでも有名です。
そしてそして、「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない」と同じ世界を舞台にした新作の発売も控えています。
アリステアとララの娘がヒロインだそうです。親子でシリーズになるTLはけっこう珍しい気がします。こちらも楽しみです!
イラストも引き続きウエハラ蜂さん!うれし~!