“後悔男”という言葉、ご存知ですか?
韓国の女性向けロマンス作品のいちジャンルで、自分がヒロインにしたひどい行動、ぞんざいに扱った行為などをあとではちゃめちゃに後悔する男(ヒーロー)を指す言葉。
韓国語では「후회남」と書きます。
それこそ韓国作品だったら、私がめっちゃ好きなWebtoonの「あなたの心がわかるように」なんてまさに“後悔男”!(日本ではピッコマで連載されています)
試しにカカオページ(連載されている韓国のサイト)に行ってみたら、作品のキーワードにバッチリ「#후회남」(後悔男)がついていました。
日本ではこのジャンルをなんて呼ぶんでしょう? 知ってたらそのキーワードでマンガや小説を調べまくるのに……!
「悪役令嬢もの」とか「異世界転生」とか、ジャンルを表すキーワードがあると検索が本当に捗りますよね。
「後悔男」の日本語版を教えてくれ……! もしくは「後悔男」というキーワードを日本でももっと周知してくれ……!
日本の作品だと、「どうせ捨てられるのなら、最後に好きにさせていただきます」は限りなく“後悔男”に近いです。最初のほうは「こんなヒーローはコテンパンに振ってくれ!」と拳を握りしめながら読んでいました(笑)。
さて、本題はここからです。
この「後悔男」、たぶん英米の海外ロマンス界隈でも人気です(笑)。
もちろん「後悔男」というワードで呼ばれてはいないのですが、「自分がヒロインにしたひどい行動、ぞんざいに扱った行為などをあとではちゃめちゃに後悔する男」がヒーローを務める作品は、私が知っているだけでもいくつかあります。
(10/23追記:翻訳ロマンス小説では「土下座ヒーロー」という名称が該当すると教えていただきました!感謝!)
今回はその中から、シリーズ4作のヒーローが全員“後悔男”(だと私が思っている)「誘惑された花嫁」を紹介します!
「誘惑された花嫁」シリーズってどんなお話?
ロマンス作家マヤ・バンクスの4部作
「誘惑された花嫁」シリーズはハーレクインから刊行されている海外ロマンス作品です。
作者はロマンス作家のマヤ・バンクス。
マヤ・バンクスは日本でも人気の作家で、ハイランダーたちの恋をテーマにした歴史ものや特殊部隊のヒーローを描く現代ものなど、多彩なジャンルで活躍しています。
「誘惑された花嫁」シリーズは現代ものの4部作。
仲良しな大富豪4人組男性が、1作ずつ主役を務めます。
「誘惑された花嫁」シリーズ
- 1作目「忘却のかなたの楽園」大富豪ラファエル×島の娘ブライアニー
- 2作目「憎いのに恋しくて」大富豪ライアン×貧しいウエイトレスのケリー
- 3作目「愛を知らない花婿」大富豪デヴォン×富豪一族の娘アシュリー
- 4作目「愛を拒む大富豪」大富豪キャム×料理人ピッパ
この大富豪4人組がね、揃いも揃ってろくでなしで(笑)。
私は「誘惑された花嫁」というシリーズ名が出てこないとき、「マヤ・バンクスのあのシリーズの名前なんだっけ? あのクズの大富豪ばっかりのやつ……」と「クズ大富豪」シリーズ呼ばわりしています(笑)。
ストーリーの骨子だけ書くと、
- 大富豪4人がそれぞれヒロインと恋に落ちる。
- が、愛や女性を軽んじていたり信じていなかったりで、ヒロインを盛大に傷つける。
- それでもヒロインはヒーローに愛を伝えるが、ヒーローは頑なに愛を認めない。
- ヒロインが自分自身を大事にすることの大切さに気づく。ヒーローのことを諦め、自分の人生を歩もうとする。
- ヒーローが愛に気づく。過去に自分自身がヒロインに対して行なった行為に後悔・絶望。
- ヒロインの愛を取り戻すため、ヒーローが奮闘する。
細部は異なるのですが、だいたいこんな感じです。
どのお話もめちゃくちゃ面白いんですよ〜!
“後悔男”ものとしての「誘惑された花嫁」シリーズの見どころ
私見ですが、“後悔男”には大事な要素があると思っていて。
ズバリ、ヒロインの自尊心です。
ヒロインはヒーローにけっこう酷いことをされます。
例えば「誘惑された花嫁」シリーズ2作目のヒロイン・ケリーは、ヒーローのライアンから婚約破棄をされました。理由はライアンの弟とケリーの浮気。もちろんこれは濡れ衣で、弟の嘘をライアンが信じてしまったことによる悲劇。
ケリーが無実を訴える言葉はライアンに届かず、ケリーはライアンの元を去ります。でもライアンはケリーを手放すことができずに結局探偵を使って見つけ出し、なんやかやと理由をつけて側にいようとします。
しかし、ライアンは浮気をされたと頑なに信じているのでケリーに酷いことを言ったりしたりしちゃうんですね。ライアンもケリーと関係を修復したいとは思っているので、わざとというか無意識なんですが。
3作目の「愛を知らない花婿」では、ヒロインのアシュリーはヒーローのデヴォンからプロポーズされ、自分が世界一幸せな花嫁だと思っていました。が、実はこの結婚には裏があり、アシュリーの父が会社を合併する条件としてデヴォンにアシュリーとの結婚を持ち掛けたのでした。つまり政略結婚です。
政略結婚なんて日本の読者は読み慣れていると思いますが(笑)、「愛を知らない花婿」のポイントはアシュリーは政略結婚だと知らず、恋愛結婚だと信じているところ。
デヴォンは世間知らずなアシュリーを愛しているふりをするのは簡単だと考えていましたが、まもなくアシュリーにバレます。
その挙げ句にアシュリーの天真爛漫さを欠点であると指摘してしまいます。アシュリーはデヴォンを愛しているので自分を変えようとし、無理を重ねていきます。
そうやって、ヒロインは自尊心を傷つけられていきます。
そしてここが大切なんですが、ヒロインは愛に破れ、疲れ果て、最後に自分を大事にするんです。こんなろくでなしは、自分に相応しくないと気づくんですね(笑)。
私は人生のどの時点で、自分にふさわしいのはこの程度だと思ってしまったのだろう。
それは驚くべき発見だった。
どうして私はこんなことに耐えているの?
「憎いのに恋しくて」より、ケリーのセリフ。
わたしにはもっと価値があると思うの。わたしにふさわしいのは、わたしを愛してくれて、わたしを変えようとしない男性だわ。自分以外の人間になろうとするのには疲れちゃった。昔の自分のほうが好きだったわ。いまの自分は好きになれない。
「愛を知らない花婿」より、アシュリーのセリフ。
ヒロインは自尊心を取り戻し、ヒーローに別れを告げます。
愛していても、自分という存在を傷つける男にきちんとNOを伝えるんですね。
私は「男性を癒し、許すためだけの存在」みたいなヒロインが苦手で。“後悔男”ジャンルは性質上、男性がひどいことをしたと気づいて超絶後悔する場面がハイライト。それまで読者は「そんなクソ男とはとっとと別れなよ!!」「きええええええ!」と心が揺さぶられ、男の後悔シーンを待ち望むことになります(笑)。そこでヒロインがスルッとヒーローを許すと、「そんな簡単に許していいの!?」と思ってしまうんですね。
ロマンス小説的に「ヒロインがヒーローを許す」ことになるのは必然ですし、ハッピーエンドを待ち望んでいるので最終的に許すことはまったく問題ありません。でも男性のひどい行いにはきちんとNOを突きつけてほしい。ひと悶着ふた悶着して戦ってほしい。なので自尊心を持って生きる女性がヒロインだとモヤモヤせずに安心して読めます。
「誘惑された花嫁」シリーズは、ヒーローが愛に跪くまでの物語であると同時に、ヒロインが愛のために見失ってしまった自分を取り戻す物語でもあります。
めっちゃくちゃおすすめなので、ぜひ読んでみてください。
「誘惑された花嫁」シリーズ、どれから読めばいい?
オススメは「憎いのに恋しくて」と「愛を知らない花婿」
4部作どれから読んでも大丈夫です!
1作目から読むのももちろんOKですが、私のおすすめは2作目「憎いのに恋しくて」と3作目「愛を知らない花婿」。
ちなみに4作目の「愛を拒む大富豪」は、ちょっとネタバレになってしまうのですが下記の記事に属するお話です。
4部作のあらすじ
忘却のかなたの楽園
「どこかで会いましたか?」愛しい男性の心ない言葉── ブライアニーは屈辱のあまり彼の頬を打っていた。 5カ月前、彼女は島を購入したいと訪れたリゾート開発会社社長、 ラファエル・デ・ルカと恋に落ち、濃密な時を過ごした。
だが契約書を手に本社に戻った彼から、その後連絡がない。
まさか、ラファエルは島を手に入れるためだけに私を誘惑したの? 妊娠に気づいた彼女は必死に悪い予感を打ち消し、彼を待った。そして、ついに意を決して彼に会いに来たのだが……。
続くラファエルの告白に、ブライアニーは言葉を失った。
「事故の後遺症で、君についての記憶をなくしたのかもしれない」
憎いのに恋しくて
貧しいウエイトレスのケリーは、仕事先のカフェで彼と出会った。
ライアンはリゾート開発会社の経営者で、優しくてハンサム。
二人は瞬く間に激しい恋に落ち、2カ月後には婚約した。だがケリーは、ある事件を境に幸せの絶頂から奈落へと落とされる。なんと、ライアンの弟に襲われそうになったのだ。あわやというところを逃げ出しフィアンセの腕に飛びこんだ彼女を、彼は信じるどころか弟をレイプ犯呼ばわりしたと激怒した。
そして婚約破棄を言い渡すと、手切れ金だと小切手を投げつけたのだ!
半年後、ケリーは遠く離れた町のさびれた食堂で働いていた。 身重の体を引きずって昼夜働く彼女の前に、ライアンが再び現れ──。
愛を知らない花婿
若き億万長者デヴォン・カーターから、 夢のようにロマンチックなディナーでプロポーズされ、 アシュリーは天にも昇るようなここちだった。
最愛の人に巡り合うまで大切に守ってきた純潔を捧げ、 わたしは世界でいちばん幸せな花嫁だと信じて疑わなかった。
デヴォンにとっては、まことに都合のいいことだった。世間知らずなアシュリーを愛しているふりをするのはたやすい。 彼女はベッドでの相性も悪くない。結婚相手としては充分だろう。
アシュリーの父親との合併条件をクリアしたデヴォンは、 ディナーの予約と指輪を手配し、まんまと政略結婚にこぎ着けた。
愛を拒む大富豪
ピッパはひそかに憧れていた実業家キャムに誘惑され、 めくるめくひとときを過ごした。
夢の一夜のあと、いまだ興奮さめやらぬ彼女のもとに、キャムから思いもよらない連絡が…… なんと、避妊に失敗したというのだ! 呆然とするピッパだったが、やがて妊娠が判明。 キャムは子どものために形式的な結婚をしようと言うが、 ピッパはそんな関係はとうてい受け入れられない。
冷酷にも「きみも子どもも愛したくないんだ」と言うキャムに、 張り裂けそうな想いで、ピッパは彼のもとを去るが……。