長編マンガのラブストーリーが大好きです。
なので今回はDLsiteがるまにで販売されている、「本文120ページ以上の長編×星4.5以上の高評価作品」を紹介します。
「本文」と書いているのは、同人作品はおまけページがある作品が多いからです。おまけが30ページ越えの作品もあります(笑)。何ページから「長編」と呼ぶかは人によってさまざまだと思うのですが、同人作品で本文120ページ越えだと個人的に「長編というか大長編だな」と思っているので、今回は120ページで区切りました。
「星」とはDLsiteがるまにのユーザー評価のこと。5段階で星をつけられます。この評価は2023年8月時点のものです。
乙女向け同人の長編ラブストーリーの素晴らしさ
本題に入る前に、私が考える乙女向け同人の長編ラブストーリーの素晴らしい点をご紹介します。「作品を早く知りたい!」と言う方はサクッとスクロールしてください。
私はヒーローにキャラ萌えすることが多いので偏ってはいるのですが、以下の3点が好きなポイントです。
- 1.ヒーローのヤバさを、長尺を使って存分に“わからせ”られる
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ヒロインに対する激重感情、執拗かつ丁寧な性行為、戦慄するような執着……。ページ数を使ってじっくりとヒロイン(と読者)にヤバさを“わからせ”られるのは、長編の醍醐味です。
- 2.ヒーローの感情の変化が堪能できる
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最初はヒロインに対して特になんとも思っていないのに、激重感情を抱くようになる。
初めから溺愛していて、次第にヤンデレになっていく。
好きになってはいけないのに、どんどん大切な存在になっていく。
なんでもいいんですが、こういった「感情の深化・気持ちの成長」は長編が得意な分野。
- 3.萌えるシチュエーションがたっぷり詰め込まれている
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カッコいいヒーローとかわいいヒロインには、すれ違ってほしいし嫉妬してほしいし仲直りしてほしいし事件に巻き込まれてほしいし可哀想な状態になってほしいし死ぬほどおせっせしてほしいし幸せになってほしい。
いろんな表情やシチュエーションをたっくさん見たいので、さまざまな展開ができる長編だとうれしくなります。
今回ご紹介する6作品は、このあたりがしっかり描かれていることが多くて二次元恋愛脳的には「助かる〜!」と思っています。6作品すべて私自身も読破しており、長尺レビューも書いてるので、もしもっと知りたいと言う方はリンクから飛んでみてください。
このページではエッセンスだけ紹介します。
【本文167ページ】(K)NIGHT & DAY 拾った逆トリ騎士が“雄”になるまで【評価4.73】
167ページ中、100ページくらいHしてる!!!
DLsiteがるまにで販売されている長編同人作品の中でも、本文167ページという屈指のページ数を誇る「(K)NIGHT & DAY」。
過去から現代の日本に逆タイムスリップしてきた騎士のケイと、彼を拾った杏奈のラブストーリーです。
タイトル通り、昼も夜も、四六時中Hしまくる2人。クンニだけで14ページもあるという、かなりすごい作品です。
ケイの高潔な騎士道と野蛮な獣性の二面性が描かれていて、ギャップが大好きな私は歓喜しました。
【本文156ページ】彼の事情と彼女の秘密【評価4.78】
正統派な恋愛ものかと思いきや、急にがるまにらしさ全開に
ありまさんが描く、うっすらファンタジー風味の恋愛もの。
毒を喰らってしまった傭兵の男と、診療所で働く塩対応美人の恋愛の過程を本文156ページで丁寧に描いています。
特筆すべきは、ヒーローがヒロインと距離を詰める過程。
数カ月かけてゆっくり&しっかり距離感を詰め、きちんとデートに誘い、彼女の好きなものを聞いて理解し……という正攻法アプローチを取っています。
え、普通じゃないかって?
がるまにだと普通じゃないです(笑)。がるまにの乙女向け同人って“ヤバい男品評会”みたいなところがあるので……(それが好きで読んでる)。
ヒーローは気持ちが高まって自然と一夜を共にした後に「好き」と言葉に出して言い、2人の将来を考えていることをさりげなく伝える。Hも女性を気遣いつつ甘やかし、しかし相手の反応を見つつここぞというときは攻めるタイプ。ゴムもしっかりつける。ヒロインが処女じゃなくても気にしない。素敵な恋人です。
ただ、さすが乙女向け同人。それだけでは終わりません。
あることが引き金となり、獣性をあらわに。
そこは本作の白眉なのでぜひ本編を読んでほしいのですが、気遣いができる男が好きな女を落としていく丁寧な描写、その後感情を揺さぶられて自分本位な荒々しいHをするというギャップ。
喰らい尽くすような表現、本当に素晴らしかったです。
【本文151ページ】はるか【評価4.72】
サンプルページだけでも見る価値がある圧巻の描き込みが151ページ続く
都有汎大好(つうはんだいすき)さんが描いた、ガチヤバ男と善良ヒロインの現代もの。
公式ページには、こんなテキストがあります。
【こんな人におすすめ】
・執着が強くて性格が捻じ曲がっているモンスターのような男が大好き
・モンスター男に蹂躙される温厚で優しい無害善良女が大好き
・体格差セックスが大好き
・筋肉大好き、ふにふにの女体が大好き
https://www.dlsite.com/girls/work/=/product_id/RJ01041735.html
これにピンときた人は今すぐ買いです。
私は「湿度が高い短編映画のよう」で「簡単に咀嚼・消化できないタイプの物語」だと思いました。
遼のじっとりとした執着、血管や筋肉の描き込み、ベタ(黒)の多い絵柄、濃密なエロ描写が、ムワッとした空気感を生んでいます。
そして、遼という底知れない男への怖さ。
本当にすごいと驚いたのが、遼が遥香の胸をいじるシーン。
女性を気持ちよくしようと思ってなくて、触りたいから触ってる感じがめちゃくちゃ伝わってきて。全然「愛撫」じゃないんです。かといってSM的にいじめているわけでもないし、夢中すぎて我を忘れているわけでもない。ただ触ってる。
TLのヒーローがヒロインの胸を触ってるのに「愛撫」じゃないだと……!? みたいな謎の衝撃を受けました(笑)。
151ページ、どのページも圧巻の描き込みなのでぜひ見てほしいです。
【本文151ページ】片端の桜【評価4.63】
「産卵シーンは3回です」というあまりに独特の注意書き
「片端の桜」が人気で、紙の単行本デビューも果たした米田ポロリスさん。「片端の桜」は、人間の男・影明と、黄金の卵を産む格の高い玉天女(ぎょくてんにょ)・珠々のラブストーリーです。
この作品の一番の特徴はなんといっても「産卵」。玉天女である珠々は影明の種付け(=セックス)により、作中で何度も産卵します。
その産卵描写に力が入りまくっており、米田ポロリスさんの性癖をめちゃくちゃ感じる作品に仕上がっています。
「片端の桜」で描かれるのは、人間の男と天女のすれ違いです。下界で商家を営む影明と、玄界で生まれ、妖王の後宮から出たことがなかった珠々。生まれた世界すら異なる2人が思いを通わせる過程を、本編151ページの大ボリュームでじっくりと追っていけるんです。
ちなみに、2人のすれ違いの主な要因はずばり「産卵」。
「何言ってんだ?」と思うかもしれませんが、ぜひ読んで確かめてください。
続編の制作も決定しています。
【本文138ページ】悪役になれなかった追放令嬢は甘く優しく壊される~幼なじみ伯爵子息の溺愛監禁調教〜【評価4.77】
女性向け・男性向け・商業・同人とマルチに活躍する作家による長編
女性向け・男性向け・商業・同人とマルチに活躍する作家・山本ともみつさんの乙女向け同人作品です。
貴族制度のあるファンタジー世界を舞台に、ヤンデレの幼なじみ伯爵子息による、純粋で歪な愛情からのヒロイン監禁&調教を本文138ページでじっくりと描いています。
乱暴ではないけど、有無を言わさず監禁調教からの意志と誇りが奪われていく過程。誇り高いヒロインが、支配されまいと抗う姿。そのヒロインを丁寧に、完膚なきまでに堕としていくヒーロー。
ネタバレになるので詳しくは読んでほしいのですが、監禁陵辱からの囚われエンドではなく、その後もドラマティックな展開が連続します。
この1冊でも物語は完結していますが、続編の「真相編」が2024年に販売予定とのこと。
【本文126ページ】潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~【評価4.82】
フォロワー数46万の大人気作家が描いたヒーロー×ヒロイン×ヒーロー
男性向け同人作品で大人気、X(Twitter)フォロワー数46万人の露々々木もげらさんが描いた乙女向け同人「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」。
この作品ではヒロインでスパイの衣(きぬ)と、彼女の“反社系”鬼上司、そしてスパイとして潜入したお屋敷にいた女装メイド長との三角関係を描いています。
つまりヒーローが2人いる作品です。でも大事なのは3Pではないってこと。鬼上司、メイド長それぞれと衣ちゃんがドチャドチャ展開に突入します。
最高……!と思ったのが、鬼上司とメイド長の対称性です。
刺青入りで反社感バリバリの鬼上司に対し、ネタバレになるので具体的には書きませんがお堅いメイド長。
ビジュアルイメージ的にも鬼上司が白、メイド長が黒。
そして性描写も対称的です。
激しめドS(Mでもある)、かつ奉仕させるタイプの鬼上司。
丁寧にねちっこく攻めて甘やかし、奉仕するタイプのメイド長。
両者とのやりとりが、半々くらい描かれています。
ただ、社長が衣ちゃんに振られても「切ない〜(涙)(……でも振られるの萌えるな)」という反応なんですが、メイド長がこの後衣ちゃんに振られて衣ちゃんが社長のほうに行ったら私は胸が張り裂けて号泣します。
読んだ人とどっちが推しか語り合いたい(私は決められない……)。
同人作品のページ数がかなり増えてきている
ここからは、最近の同人作品のページ数がかなり増えていることに関する雑談です。
商業作品でも同人作品でも「長編ラブストーリーが好き」という気持ちは変わらないのですが、ひとくちに「長編」といっても媒体やジャンルによってかなり長さが違うもの。
商業の少女マンガだったら10巻以上連載が続いてる作品が「長編」と言われるイメージがあります。商業のTLマンガは単行本化しない作品も多いので一概に言えませんが、おやぬさんの「だったら俺に惚れてしまえ」は合冊版が全13巻(単話版が全65話)刊行されているので、かなり長編。ただ、TLマンガは単話版が10話以上あったら私は「たくさん読める!」とうれしくなります。
一方、同人マンガ(一次創作)は「連載」ではなく「読み切り」が主体なので、「ページ数」によって長編と言われたり短編と言われたり。
個人的な印象ですが、ここ1〜2年で同人作品の長編化(そしてシリーズ化)が進んできていると思っていて。
特にDLsiteがるまになどのダウンロード同人サイトでその傾向が顕著です。
例えば2021年のDLsiteがるまに総合ランキングトップ10の作品は、
- 「dog eat dog era〜竜人族奴隷の双子と催眠交尾〜」が本文65P
- 「宇宙の始祖様の番になるしかない!」が本文48P
- 「燕嵐閨中顧話」が本文45P
- 「異世界トリップ先で助けてくれたのは、 人殺しの少年でした。2」が本文57P
- 「隙あらば彼氏の性癖を歪めたい!」が本文61P
- 「ヤンデレ王子が社畜女の私を離さない」が本文42P
- 「Mede little Roy(メデリトルロイ)~落ちこぼれ魔女の正体は、精液(魔力)を糧とする最強の悪魔でした。〜」が本文54P
- 「ダメな私は職場の後輩に守られっ話」が本文55P
- 「触れたらセックス!?ダマサレ先生と悪魔学~ツンギレ悪魔は抗えない〜」が本文24P
- 「ヤンデレ王子が社畜女の私を離さない2」が本文88P
平均すると53.9ページです。
ちなみに「触れたらセックス!?ダマサレ先生と悪魔学~ツンギレ悪魔は抗えない〜」は24ページと少なく見えるかもしれませんがフルカラー作品です。同人作品でフルカラー24ページはすごい。
8月現在、2023年のDLsiteがるまに総合ランキングトップ10の作品は
- 「続・仕事ができない榊くんは夜だけ有能」が本文79P
- 「崩壊モラリティ〜変態的露出衣装の異世界転生だけど執事への恋を貫きます〜」が本文59P
- 「203号の隣人は鍵束一つ残して消えた。」が本文77P
- 「むっつり赤ずきんくんからは逃げられない」が本文80P
- 「悪役になれなかった追放令嬢は甘く優しく壊される~幼なじみ伯爵子息の溺愛監禁調教〜」が本文138P
- 「このままじゃ私たち、親友らしくいられない」が本文70P
- 「潜入!崖っぷちスパイの借金返済RTA~女装メイドと鬼上司~」が本文126P
- 「かわいそうなキミがいちばんカワイイ-共依存な千晶くんとキメセクえっち-」が本文86P
- 「あざと可愛い✕くんの執着サド交尾は本物です」が本文44P
- 「仕事ができない榊くんは夜だけ有能」が本文38P
平均すると79.7ページでした。
ちなみに「仕事ができない榊くんは夜だけ有能」「続・仕事ができない榊くんは夜だけ有能」は2022年発売の作品なのですが、どちらもランキングに入ってる……すごい……。
おまけマンガが30ページ越えの作品などもあるのでかなり雑な比較ですが、少なくとも2021年から2023年までの2年でランキング上位作品の平均ページ数はかなり増えていることがわかります。
ページ数が多い作品が人気になることが多いので、作者さんたちがその流行を重視して増ページ傾向にあったりするんだろうか。
なんとなく、紙の同人作品というと20〜30ページくらいが多いイメージがありますが、ダウンロード同人だと最近は40ページ越えが普通になり、100ページ越えの作品もかなり多い。
「好きなものを自分の好きに描ける一次創作だから、作者さんの好きなページ数で楽しく無理なく出してくれれば」というのが大前提。
20〜30ページくらいで好きな作品も数多くあり、ギュッと詰まった世界観、自分の「好き」を脳から直接取り出したような“癖”、素晴らしいです。一般的に、ページ数が多いとその長さやストーリーの構造によっては、「物語の進行がゆっくりすぎてダレる」とか「ストーリーが複雑になると理解しづらい」とかの問題も起こってきますしね。
ただ、個人的な好みとしてページ数が多い作品が大好き。
今回ご紹介した6作品はどれも長編の面白さを感じたので、ぜひチェックしてみてください。