自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回は山野辺りりさんさんのTL小説「最強騎士様と大人の二人旅」です。イラストは「隣の席の変な先輩」のうすくちさん。今回はヒーローに関するネタバレがありますのでご注意を。このレビューが、購入の参考になれば幸いです。
あらすじ
貴女のすべては私のものになるのだから、勝手に傷を負うことも許さない
騎士様に守られ、そして抱かれて!?
逃避行は危険がいっぱい♥
町一番の仕立屋で働くジュリアはある夜殺人を目撃してしまい、騎士リントヴェールから法廷での証言を依頼される。男性に不慣れなのにどこか風変わりな凄腕騎士様と二人旅に出ることになったジュリア。自分など束の間の護衛対象に過ぎないと己に言い聞かせるが、どんな時も守ってくれるリントヴェールへの想いはいつしか募り……。貴方の髪色みたいで、月が綺麗です──最強騎士様との、危険な初恋旅♡
https://honey.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576210834
実は「●●●の溺愛もの」なんです
基本的にこのブログでは、物語の核心に触れるネタバレはせずに魅力を伝えたいと思っているのですが、今回はネタバレをさせてください。
というのは、ネタバレをせずにこの物語の面白いところは語れないから……。ネタバレを避けたい人は「戻る」をお願いします。
「あらすじ」は出版社の公式サイトに記載されているものを引用しています。
でも、そこには書かれていないんです。
これが、「番(つがい)の溺愛もの」だってことが。
「つがい」というルビを振らなくても、オタクはみんな読める説。
番をキャラクター設定の根幹にした物語、素晴らしいですよね。
作品によってかなり設定に違いがあるので、「これが正解」というものはないかもしれませんが、ちょっとだけ説明すると、番(つがい)とは「本能的に求める伴侶」とされることが多いです。「本能的」というのがキモで、ただの恋人よりも結びつきが強く、理屈では説明できないほど相手を激しく求めることが特徴。
「オメガバース」と紐づくこともあります。
私が初めて「つがい」設定の物語を読んだのは、たぶんクレスリー・コールの「ローア」シリーズ、もしくはJ・R・ウォードの「ブラック・ダガー・ブラザーフッド」シリーズだと思います。どちらもめっっっっっっちゃくちゃ面白くて、今でも何度も読み返しています。
さて「最強騎士様と大人の二人旅」に話を戻します。
ヒーローのリントヴェールとヒロインのジュリアは、初対面でお互いから芳しい香りを感じます。これも番の王道設定。本能的に惹かれ合うんですね。
余談ですが、最初につがいだと確信を持つのは男性側が多い。というか、男性側が獣人だったりモンスターだったりと「つがいが存在する種族・生態」で、人間の女性と結ばれる物語が定番です。
「最強騎士様と大人の二人旅」は、序盤はちょっと物語に入り込みづらいと個人的には思っています。どういう物語なのかわからないまま進む印象です。でも2人の逃避行が始まり、「足洗い事件」が起こってからグッと面白くなります。
「これはもしや、つがいの逃避行なのでは……?」と気付くんですね。
リントヴェールが(人間の女性としてはたぶん一般的な)ジュリアをとても脆いものだと思い、過保護と言えるほど大切にする姿に胸がときめきます。
またリントヴェールの一族の特性が強く出るシーン……大事な女性を飢えさせることを不名誉と考えたり、つがいがいなくなったら冷静さを保っていられず、破壊衝動に支配されたりするシーンも物語のハイライトです。
イラストは「隣の席の変な先輩」のうすくちさん
TL小説はイラストレーターも本当に大事だと思っているのですが(イラストが素敵だと、物語への没入感が全然違います)、「最強騎士様と大人の二人旅」はうすくちさんがイラストを担当。
そう、「隣の席の変な先輩」のうすくちさんです!
リントヴェールがカッコよく、ジュリアがかわいく描かれていて、物語の魅力が増しています。
作者の山野辺りりさんは、「獣王様のメインディッシュ」で知ってからすごく好きなTL小説家です。
Kindle Unlimitedの対象になっている作品もありますので、もし気になる人はチェックしてみてください。2023年1月時点でKindle Unlimited対象作品だと、
「侯爵令息は意地っ張りな令嬢をかわいがりたくて仕方ない」
「軍神王と人質花嫁 甘い口づけは蜜愛の予感」
などがオススメです。