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「騎士の殉愛」(栢野すばる)ヒーローの不憫さ天元突破&“初めて”のシーンに度肝を抜かれる【TL小説感想】

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自腹で買った本当に面白い作品のレビュー、今回は栢野すばるさんさんのTL小説「騎士の殉愛」です。不憫で切ないヒーローが好きな方、ぜひ読んでください。このレビューが、購入の参考になれば幸いです。

目次

あらすじ

あとどれだけ捧げれば、君を取り返せるだろう。

兄の起こした反乱により領地を追われ、40歳も年上の公爵と政略結婚をしたマリカ。だが夫と夫婦関係はなく、いずれ“仮父”を呼ぶと告げられていた。仮父とは、子供をつくれない夫の代わりに妻に子種を分けてくれる男のこと。嫌悪感を抱くマリカだが、仮父として現れたのは、かつての婚約者で初恋の人アデルだった。愛しい男の熱に溺れ、マリカはつい彼への恋心を漏らしてしまう。そんな彼女にアデルは「一緒に地獄に堕ちよう」と、不穏な言葉を告げてきて……。

最凶騎士×薄幸の公爵夫人、すべてをなげうつ狂愛に翻弄されて……。

https://www.sonyabunko.com/books/9784781697130/

一番大切な宝物を取り戻すためにあがく、恋に狂ったヒーロー

「縄跳びで引っかからずに100回飛べたら、きっといいことがある」のような、他愛ない願掛けをした記憶、皆さんありませんか?

「騎士の殉愛」のヒーロー、アデルの願掛けは“ガチ”です。

『敵兵を十人屠ったら褒美にマリカを返してください』

『五十人屠ったら褒美にマリカを返してください』

『百人屠ったら褒美にマリカを返してください』

「騎士の殉愛」より。

そう、「騎士の殉愛」は一番大切な宝物(=ヒロイン)を奪われ、それを取り戻すためにあがく恋に狂ったヒーローのお話なんです。

ヒーローのアデルは騎士の家の子で、幼い頃から異常に厳しく育てられました。

薄暗い世界と人を殺す時間しか知らないアデルの希望は、幼い頃から許嫁としてお互いを大事に思ってきたヒロインのマリカだけ。

アデルが12歳、マリカが7歳のときに2人は出会い、幼いながらも惹かれ合い、仲良くなっていきます。

しかしマリカの家が治める領土が敵に奪われ、マリカは40歳年上の公爵と政略結婚することに。

この物語のキーは、子供を作れない夫の代わりに、妻に子種を分けてくれる仮父(かふ)という制度が法的に認められていること。

マリカの夫は子供が作れないため、仮父としてアデルが選ばれます。

「騎士の殉愛」の本当に素晴らしいところは、アデルとマリカの出会いから子供時代のエピソードをじっくり書いたことです。

2人がどれだけお互いを思い合っているかわかるので、仮父という制度に翻弄されるその後の切ない展開がより迫ってきます。

特にアデルが狂気的なまでにマリカをこいねがう気持ちが切ない……(マジで萌える)

私は「恋に狂った男が見たいからTLを読んでいる」と前に書きましたが、やっぱり「なぜそれほどヒロインが好きなのか」という理由の部分に納得感があると、より物語に入り込めます。

その意味で、「騎士の殉愛」はつらい境遇のアデルが、マリカという生命力に溢れる鮮烈な存在を宝物のように大切にし、それを取り戻そうと必死になる姿がすごく胸に迫ってきました。

もうね、めちゃくちゃかわいそうなんですよアデル……。助けてあげてくれ……! この2人幸せになれるの……?と思いながらページをめくる手が止まりません。

初めてのシーンで度肝を抜かれる

「騎士の殉愛」でどうしても外せないのが、ちょっとネタバレになるので言えないのですが2人の初体験のシーンです。

ネタバレしない表現の限界。ぜひ読んでみてください。

作者の栢野すばるさん、どんなフェチズムなんだ……(笑)。

いろいろTLを読んできましたが、このシチュエーションは初めてでした。素晴らしかったです!

「騎士の殉愛」はTL小説好きならみんな一度は読んだことがある(?)ソーニャ文庫の作品です。「歪んだ愛は美しい。」がキャッチコピーのソーニャ文庫は、「偏執的な愛」がテーマ。

まさに「騎士の殉愛」にぴったり。

ソーニャ文庫の公式サイトで「騎士の殉愛」の試し読みもできます。

ソーニャ文庫には大好きな作品・作家さんが多いのですが、「騎士の殉愛」は本当に何度も読み返しています。

栢野すばるさんの作品は、世界設定……物語の土台がしっかりしているので、キャラクターがいきいきとしているんですよね。

例えば「騎士の殉愛」だと、少年期のアデルは関所の数や集落の場所など、地図の修正・把握をしながら旅をしています。これで「まだ地図がしっかり完成されてない時代なんだな」と、小説の世界への解像度がちょっと上がります。あと「鉛筆」じゃなくて「鉄筆」だったり。

こういう描写の積み重ねが、物語への没入感を高めてくれるんですよね。

もちろん設定資料を読みたいわけではないので適度でいいのですが、主人公たちを取り巻く世界がしっかりしていると、よりキャラクターの言動に説得力が増す気がします。

Cielさんのイラストも雰囲気にぴったりで、物語を盛り上げます。表紙のアデルの、一途にマリカを見つめる切ない表情が本当によくて。幼いときのアデルとマリカもかわいい。

切ないお話で情緒を乱されたい方は、ぜひ読んでみてください。

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